目が綺麗だと思った。
初めて会った時から私はその目に惹きつられてしまったのだ。
大木の中で、番人をしていると聞いた事があるけれどそれが私にとっては重要ではない。
彼女が私の絶対的価値であり存在であり、神であった。
だから私は毎日彼女の元へ足を運んでいる。

「こんにちは。」

「また来てくれたのね。」

そう言って彼女は微笑む。
その笑顔すらもこの双方から覗き込む液晶越しの映像が頭から離れない。
彼女は、目が見えないらしいがそれが唯一の私の救いであった。
綺麗な彼女に私のような存在を映してはいけない。
それだけに彼女は神聖だった。
触れてはいけない彼女に、いつも私は涙を流す。

「今日誕生日なんでしょう?」

「うん、誕生日。
私の生まれた日。」

塩辛い水が、膨らんだ頬を通り越して地面に落ちる音が聞こえた。
拭うことも許されない彼女の前では、私は酷く脆い。
私達の関係は、一体なんであろうか。
彼女の為にこの大木に挑まなければいけないと言うのに、私はそれが億劫で辛いのだ。

「泣かないで。
折角の誕生日が濡れてしまうわ。」

そうやって私の目元へ腕を伸ばす華奢な彼女の手が私の瞼へ触れる。
細い、今にも折れてしまいそうな指が優しく肌を撫でる感触に、更に零れ落ちる涙に対処することが、どうにも出来やしないのだ。

「お誕生日おめでとう。」

「ありがとう。」





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