視界が、真っ赤だと気付いたのはこの時が初めてだった。
仰向けで寝転がっていて、その真上には満天の星空が広がっている、ハズだったのに今見えているのは暗い中で赤黒く広がる視界だけである。
そう言えば身体の至る所が痛い。
なにが起こったのか、は分かる。
襲われたのだ。
誰だかは分からない。
けれども、何故こうなってしまったのかは分かる。
私がアメリカに刃向かったから、それに違いない。

「お気分は?」

綺麗に紡がれる声が耳に優しい。
恐らく、私をこんな酷い目に遭わせた人だろう。
だけれど、嫌な気分ではない。
寧ろ爽快であった。

「不思議と、良い気分です・・・。」

「そうでしょうね。
貴女はこの国の為に死ぬのですから。」

重い金属音が近くで鳴り響く。
もうすぐで私は死ぬのだとそんな予感が胸中を占めた。
しかしそれでも良いのだ。
美しいこの人に殺されるのが私の運命に違いない。

「今日、私誕生日なのよ。」

「それはさぞ良い日になるでしょう。」

「えぇ、そうね。
天使様に殺されるのは幸運なことだわ。」

ありがとう。
そう口に出来たのかは分からない。
ただ、目に入った赤い血が暗闇に閉ざされたのは発砲された軽い音が鳴り響いた瞬間だった。
あの人は一体誰だったのか、それは分からないままだったけれど、神の使いに違いない。
なにせこんなにも心が穏やかになったのは人生で初めてのことだったから。
だから私は今、幸福である。






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