こんにちは。
今日は日本式バレンタインで幼馴染みである承太郎氏に手抜きで作ったチョコレートを手渡しで与えるべく珍しく隣を歩き、登校している。
因みに回りに女の子がわんさかいる。
天国とはこのことか。

「承太郎、承太郎。
右斜め後ろの女の子見てみ。
めちゃくちゃワイ好みやで。」

「なんでそんなエセ関西弁なんだ・・・。」

お馴染みの「やれやれ」を聞きながら後ろの女の子を改めて見た。
今日がバレンタインだからか、顔を赤らめながら承太郎の後を着いて来ている。
あれが正に大和撫子だぜ。
あんな奥ゆかしい子が私は大好きです。

「モテるってツライぜ・・・。」

「さも自分がモテてる風に言うんじゃあねぇ。」

的確なツッコミを貰う。
折角女の子に囲まれて気分が良いと言うのに全く細かい男だぜ。
こちらがやれやれだぜ、と含み笑いを見せれば頭を殴られた。
いや、待てよ。
予想より痛いわ。
大体195cmの大男がか弱い女の子を殴ることが間違いではないのか!
今の日本はどうなっているのだ!
私の怒りは最高潮に達している。

「殴ることないでしょうが!
痛いんだよこのデカ男が!!」

「腹の立つ顔をしてたお前が悪い。」

「んだとチョコやらねェぞコラ!
無理矢理渡すけどな!!」

「お構いなしじゃあねぇか。」

そう言い合いをしていれば、承太郎と私の会話が珍しいのか、嬉々として声を上げながら耳を澄ましている女子共。
見せ物じゃねぇぞ!散れ!
右斜め後ろの女の子以外!

「手抜きの力を今見せてやる!」

「本人を目の前にそれを言うか。」

「ええい黙れ黙れ!
取り敢えず受け取れい!!」

無理矢理適当にラッピングした箱を承太郎へ押し付ける。
ふぅ、これで一安心だ。
ほくそ笑んでから承太郎を見上げればまたも殴られる。
今度は先程とは比べものにならないぐらいに痛い。
手加減なしかよこの男は・・・。
頭を摩って文句の一つでも言ってやろうかとしたその頃には学校へ着いた。
タイミングがいいのか悪いのか。
取り敢えず校門で待ち伏せていた女子生徒が承太郎を取り囲み、やいチョコだの、やいラブレターだのを一斉に持ってくるものだから潰されそうになった。
最近の女子はアプローチが凄いことだ。
やれやれとその場を脱兎の如く逃げ出した。
さて、面倒くさそうな承太郎は放っておいて教室にでも行こうと、足を向けた瞬間に呼び止められる。
承太郎でもないその声は高く可愛らしい。
振り返るとあの私好みな女の子が顔を赤くさせて立っていた。

「あれどうしたの?
代わりにチョコ承太郎にあげてこようか?」

個人的にこういう他人頼りな物の渡し方はあまり好きではないのだが、ここは私の好みのよしみで渡しておいてあげようと声を掛けた。
相手の女の子は顔を真っ赤にして俯いている。

「い、いえ、その、違くて・・・。
私が渡したいのは・・・!」

なにやら口をもごもごとさせたかと思うと急に顔を上げては綺麗にラッピングされた箱を手渡された。
少しオチが分かりかけてきたが、油断は禁物だ。
震える手が振動して全身痙攣を起こしたような状態になる。
まさか、まさかこんな状況に陥るとは一生の人生の中で誰も考えまい。
覚悟も決まっていない中でその女の子は声を張り上げる。
私は戦慄した。

「先輩なんです!
受け取ってください!!」

そして走り去って行くまさかの後輩。
真っ白な頭ではなにも考えられず、取り敢えずこの危機的状況から逃れなければと先程の後輩に負けないよう声を張り上げた。

「カモンヘルプミー承太郎!!!」





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