何故リゼが襲われたのか、それは恐らく俺のせいだと断言出来る。
恨みは随分と買われているのが原因で、密かにとは言えリゼと大分会っていたのが何処からか漏れたのだろう。
いつかこんな時が来るのではないかと思っていた。
リゼと会うのはこれきりにした方が良いのだろうな、と敢えて賑やかな通りを歩く。
殺気もなにも感じられない。
敵は明らかに近距離パワー型ではないのは分かっている。
人間を小さくさせるスタンドは仲間にはいるが、全くの別物である。
しかしなんらかの下準備が必要な筈だ。
相手に傷を付ける、などそんな準備が。
リゼには怪我一つさえなかった。
でもまた違うものなのだ。
それがなにかは当然分からない。
辺りを注意しつつアジトへ行けば誰かが知っていることだろう。
それを信じるしかなかった。

「おっ、お嬢さん可愛いね!」

いつの間にか市場まで来ていたようだ。
野菜売りの店主らしき男がリゼを目で捕まえていた。
驚いているのか身動き一つとしてしないリゼは人間が苦手なのかどうなのか。

「なんだ、あんたの娘かい?」

「いや・・・。」

リゼを覗き込む店主に警戒しながらも返答する。
未だリゼは微動だにしない。

「娘かと思ったよ!
こりゃあべっぴんになるぜ!
そうだこれやるよ!」

気前が良い店主は豪快な笑い声と共にトマトやらなにやらを入れた袋を手渡して来た。
「仲良く食べな!」と言われ、勢いでそれを受け取る。
グラッツィエと返せばまた気前の良い笑いを腹から出していた。
リゼに手を振る店主に遠慮がちにリゼも小さく手を振る。
左にリゼ、右に野菜をぶら下げた俺は普段からは想像もつかないような滑稽さが滲み出ていることだろう。
途端にやるせない気持ちになって来た。

「あら、お嬢ちゃん。」

また一つ聞こえて来る声に振り向く。
今度はなんだと、見れば肉屋がそこにはあった。
女が手を招いている。
恐らくリゼを呼んでいるようだ。
目をぱちりと開くリゼと一緒に女へ近付いた。

「お嬢ちゃん美人ね。
細っこいし、お目めも大きいしで可愛らしい子!」

ふふ、と笑う女店員に顔を赤らめるリゼ。
それがまたウけたのかリゼを撫で回す女店員。
耳まで赤くなっているのがはっきり分かる。

「食べちゃいたいくらいに可愛い!
そうだ、あまり細いのは心配だからこれ持っていきなよ。」

「・・・グラッツィエ。」

渡されたのはベーコンだった。
またも無料で貰った訳だが、これで終りではなかった。
歩けば歩く程に、市場の人々はリゼに話し掛けては魚や果物、はたまた子供にやる物ではない酒などをくれたりした。
色んな物が右手に溢れかえる程ある。
流石に重たくはなって来たのが先程から伝わって来ているのか、リゼが焦りながら自分で歩こうと目で訴えて来るが、その度に大丈夫とだけ答える。
それでも落ち着かないのか俺の肩に顔を埋めたり、離したりを繰り返している。
可愛い、とらしくない程に思う。
リゼと右手の荷物を抱え直しながら漸く目の前にあるアジトを眺めた。



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