知らないお兄さんが家にやってきた。
高いイスにわたしを座らせてくれてケーキというおかしをくれた。
フォークに切ったケーキを乗せて口に入れると甘い味がして新しいかんじがする。
目をキラキラにしながら食べるとお兄さんは長い指をした手で頭をなでてくれた。
あたたかくて、気持ちがよくて、目を閉じる。
お父さんとお母さんは頭をなでてくれないからうれしい。
甘いおかしと、あたたかい手でお腹いっぱいになったわたしをお兄さんがキレイな目で見ていた。
はずかすくて下を見る。
でもお兄さんを見たくて顔を上げればちょっと笑っているのが見えてまたはずかしくなったけれど、うれしくなった。
おかしいな、この気持ちはなんだろう。
とくん、となるわたしの中はふわふわとしている。
あぁ、なんだろうこれ。

「リゼ、俺は今から出掛けなくてはならないんだ。
俺はお前にも一緒に来てほしいと思っている。」

まっすぐにそう言われた。
出かけるって、お外に?
お外はキケンだからってお母さんが言っててあまり出たことがない。
こわいよ、と言ったらぶたれちゃうかな。
お兄さんも、こわい人なのかな。
いやなことがうかぶ。
あのやさしさもウソだったなんて本当はしんじたくない。
でも、とお兄さんを見れない。
どうしよう、とそれだけが頭にある。
どうしよう。

「リゼ。」

びくりと、ふるえた。
すぐに目を手でかくす。
いたいのはイヤだよ!
イイコでいるからぶたないで!
すぐに泣いてしまうからわたしはイケナイコ。
分かっているのに、わたしは泣いてしまう。
だからお母さんにもきらわれるし、お父さんにもムシをされるんだ。
わたしは、イケナイコなんだ。
・・・いつまでもいたいのはこなかった。
そろり、と指のスキマからのぞいてみれば頭にあたたかいのがある。
またなでられた。
そうおもった。

「外は、怖いことだらけではないさ。」

それだけ言われた。
動かないでいると、近くにきてだっこをされる。
あまりの高さに目をぎゅっとつむる。
もうすぐで上に手がとどきそうだったから。
お兄さんのかたにうずまるとお兄さんはせなかをやさしくたたいてくれる。
ちょっとだけほっとした。

「怖かったら無理をしないでいい。
俺がリゼを守っているからな。」

そうしてあるく。
ドアの開く音がして、お兄さんのコトバをなんかいもくり返しながらわたしは外を見た。





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