暇が出来た。
数日間の暇だ。
殺しの依頼が、数日間もない。
殺しをしてもしなくても、大した収入はないが、更に減るのだけは生活が苦しい。
俺だけではなく、他のメンバーもだ。
仕事はなにもない。
暗殺業がなくなれば俺達はどうやって生きていけば良いのか。
生き方も見付からない以上どうする事もできない。
ゲスもゲス以下だ。
真っ当な生き方なんて何処に落ちているのかさえ分からない。
寧ろ落ちていたら幸運だ。
ラッキーだ。
今確かに持っている確実な暇を肩に引っ提げて、何処かに落ちているはずだろうラッキーを求め、歩きに歩いていればいつもの場所に辿り着く。
白く、赤い目をしたリゼの家だ。
別に付き合っているとかではないと思うが、気付けば此処にいて、リゼと見つめ合ったり、話をしたりしている。
リゼは俺と違い至極真っ当だ。
画家を目指しているらしく、今は大学に通っている。
課題の絵に追われている時はロクな会話という会話も出来ないが、それでも彼女といると楽しい気分になるし、心が安らぐ気がする。
別に彼女を好きと言う訳じゃあない。
前にメンバーから「早く付き合えよ。」なんて言われたのが疑問だが、まあ敢えてこの話題には触れないように遮ったのは記憶に新しい。
唯リゼといると心が暖まるだけだ。
別れる際にもっと一緒に居たいとか、寂しいとか感じるだけだ。
別に好意を寄せている訳では決してないと、思いたい。
殺し屋が一般の女を好きになるなんて駄目だろう。
俺は許可しない派だ。
そう脳内で誰に聞かせるでもなく一方的に自己解決する間にドアをノックしていた。
最初の挨拶は暇だから来てみた、でいいだろうか。
寧ろ彼女が居るのかどうかも怪しい。
火曜の午前十時は如何なる時もいる時間だ。
居なかった時はないと断言出来るほど。
しかし、どうだろう。
ノックしても出ない時はなかった。
まさか出掛けているのか。
出掛けた先で事故か何かに遭ったのでは・・・。
俺達のようにタチの悪い連中に捕まり人身売買を強要され、外国へ売り飛ばされているのでは・・・。
それとも男が出来たか。
とうとう愛想が尽きてしまったのか。
様々な思いが駆け巡る中、取り敢えずドアノブを回してみる。
開いた。
なんと不用心な。
あれだけ鍵は閉めておいた方が良いと言ったのに。
中に入ろうと足を一歩踏み出すが、躊躇する。
もしもリゼが今中にいたとして、勝手に不法侵入して来た事が知れたら嫌われるのではないだろうか。
リゼに嫌われでもしたら立ち直れる気がしない。
殺し屋が殺される事態になってしまう事も無きにしも非ずだ。
・・・。
・・・もう考えるのはやめにしよう。
殺された時は運がなかった、実力が足りなかったと思う事にしよう。
足を踏み出す。
歩き慣れた部屋を進んで行く。
リビングには白い部屋の真ん中に白いソファーとテーブル。
そのソファーの上で体を丸めたリゼの姿が確認出来た。
あぁ、と胸を撫で下ろす。
寝ていただけだったのか。
眠るリゼに近付いて、頬を撫でる。
恐ろしく白い肌はいつもと変わりない。
じっ、と眺めているとピクリと目蓋が動き、そしてゆっくりと赤い目が姿を現した。
驚くでもなく、俺と同様にじっ、と見つめるその目は心なしか眠そうでもある。
挨拶を、と。
先程の玄関先で考えた言葉を伝える為口を開いた。

「会いに来た。」

これを考えていた訳ではなかったはずだ、とまた一人で言い訳を見つけようとすれば、眠そうな目を細めて微笑むリゼがいた。
あぁ、もういいか。
俺は結局リゼに会いに来た、それだけだったようだ。






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