「ベネ!可愛い子供じゃあないか!」

お兄さんといっしょに入ったたてものには何人かお兄さんがいた。
ソファに座る人や、本を読む人、のみものをカップに注いでいる人もいた。
はじめて見る人ばっかりでキンチョウする。
こわくてお兄さんにひっしにしがみついた。
そうしたら一人のかみの長いお兄さんが近づいてきた。
目がキラキラとしている。
そのお兄さんが最初に話しかけてきた。

「ダレダレダレダレ!!
リーダーの子?」

「リゼだ。」

「あっ!んっ?んん??」

かみの長いお兄さんがわたしを見てくる。
人に見られるのがニガテなわたしはお兄さんにつかまる。
目がこわかった。

「なに?スタンド?」

「そうだ。」

「なるほど。
ピアッチェーレ!
リゼちゃん、俺はメローネだよ!」

ぐっ、とかおが近くなる。
それとほっぺたにあったかいのと、へんなかんじがした。
ぬるぬるして、体がぶつぶつなる。
きもちわるくてお兄さんの服をもっとにぎってしまった。
前が見えなくなってきた。

「ん?」

「メローネ。」

メローネ、お兄さんにお兄さんがあたまをはたく。
ナミダがたまっていてよく見えないけれど、はたいている音がした。
ぬるぬるするほっぺたをハンカチでお兄さんがふいてくれる。
びっくりした。

「いや、悪気はなかったんだよ・・・。
ただリゼさ、最近なにも食べてないだろう。
二日ぐらい。
味的にさ。」

さっき甘い物を食べたぐらいだ、とメローネお兄さんがそう言った。
お兄さんが少し考えて、あぁ、と声に出す。
わたしはいつも食べているんだけど、ちがうらしい。

「・・・昼飯作るか。」

「材料はタダだろ?
リゼちゃん可愛いからもらいたい放題だったハズだね。」

「ミネストローネ食いてェ。」

「俺は野菜系マリネ。」

「オイルパスタも頼む。」

「俺が作るのか・・・。」

お兄さんがそう言ってからわたしを下におろす。
はなれたくなくてふくをつかむと、お兄さんはあたまをなでてくれた。
ふくから手をはなしてまわりを見た。
メローネお兄さんがわたしと同じくらいに高さを合わせてくれる。
たぶん、わたしはメローネお兄さんがニガテだ。

「誰かこういうスタンドを使う奴に会ったことはあるか?」

お兄さんがうでをまくりながら言った。
そうしたらたばこに火をつけようとしているお兄さんがこたえる。
ここにはお兄さんばかりだとおもった。

「一度だけだが、会ったことはある。
見たことはないが。」

「なにをされたんだ。」

「別になにも。
肩がぶつかっただけだ。」

わたしをちらりと見るお兄さんはばつがわるそうに火を消してたばこもしまう。
となりにいるお兄さんが、そのお兄さんになんでたばこをすわないのか聞いていて、お兄さんがこたえずにとなりのお兄さんのあたまをなぐった。
いたそう。

「リゼちゃん、こっち来て。」

メローネお兄さんに手をひかれた。
ソファにすわって、と言われてそっとすわる。
なにをされるんだろうとこわかった。
キンチョウしてかたがいたい。
一人分すわれるだけのスキマのとなりにはメガネをかけたお兄さんがすわっていた。

「リゼちゃん声は出せないんだっけ?」

えがおで聞かれたしつもんにうっ、となる。
それから下をむいてしまって口をあける。
ひっしにこえを出そうとした。
出そうとしたけど、ちゃんと出なかった。

「お・・・えん、あ・・・あ・・・い。」

ちゃんとできなくてナミダがおちそうになるのをガマンしようとしてると、ながい足がメローネお兄さんのかおをけったのが見えた。
へんてこなこえといっしょにゆかにたおれるメローネお兄さん。
ビックリしてナミダがひっこんだ。

「あ、悪い。
ワザとじゃあねェぜ?
足を伸ばしたらたまたまお前の顔面があっただけだからな。」

本を見たままメローネお兄さんを見ないメガネのお兄さん。
本当なのかウソなのか、メローネお兄さんをけった足は元のいちにある。
メガネのお兄さんを見ていたら目が合ってしまっていそいで下にさげる。
するとうしろからあたまをなでられるかんじがした。

「メローネお前が悪いんだぜェ。
なぁギアッチョ。」

「うっせ。」

しょ〜がねぇ〜な〜、と言いながらメローネお兄さんを見下ろすお兄さん。
かいわをおもい出しながら、メガネのお兄さんはギアッチョというなまえなんだとうなずく。
わたしがギアッチョお兄さんのなまえをなん回も心の中で言っている内にメローネお兄さんがかおをさすりながらおきた。
赤くなってる。

「ギアッチョ、健康状態は、良好だ・・・。」

「うるせェ、黙れ、喋るな、ウゼェ。」

同じようなことばをギアッチョお兄さんがメローネお兄さんに言ってからメローネお兄さんがわたしに目を合わせる。
いたそうなのにわらってる、とふしぎにおもった。

「いや〜、リゼちゃんごめんね。
嫌なこと聞いちゃったね。」

「少しはデリカシーを持て。
女に嫌われるぞ。」

「プロシュートは相変わらず手厳しいなァ。」

それでもえがおのメローネお兄さん。
そこにモノがとんでくる。
なげたのはプロシュートお兄さんだ。
メローネお兄さんにちゃんと当たっている。
「ペッシ、お前もやれ。」ととなりのお兄さんにプロシュートお兄さんがおこったように言うと、こまったようなかおをしておろおろするペッシお兄さん。
もっとやれとこえも聞こえる。
たぶん二人でいるお兄さんたちだ。
たのしそうにメローネお兄さんをいじめるお兄さんたちにくすり、と口がなる。
あったかい色がふわふわとうかんでいるような、おもしろいへや。
わたしは口を手に当ててわらった。

「リゼちゃん笑ってる顔の方が可愛いよ!
ディ・モールトベネ!!」

メローネお兄さんのこえにはっ、とした。
お兄さんたちがわたしを見ている。
だんだんはずかしくなってきてかおをかくしているとメローネお兄さんが立ち上がった。
いやなよかんがする。

「こんな可愛いリゼちゃんはリゾットに見せなきゃ損だね!
やっべ呼んでこよ!」

「リーダー、リゼのこと好きだからなァ〜。」

「わかりやすすぎんだよ。」

「お前も大概だがな。」

「どういうことだよプロシュート。」

「ま、まあまあ・・・。」

みんな言いたいほうだいだ。
かおがあつくてまっかになっていくのがわかった。
お兄さんには見られたくないおもいで、ソファを下りる。
いそいでへやを出ようとしたところでドアがひらいた。
だれかが入ってきたみたいで、でもとにかくかくれたくて、その人のうしろににげた。
足にぴたりとしがみついた。

「えっ、これどういう状況?」

「イルーゾォ羨ましすぎる。」

もうメローネお兄さんしゃべらないで、と言いたい。
わたしのせいでうごけないイルーゾォお兄さんは止まったままで、どうしようもない。
それから少ししてお兄さんがごはんを持ってきた。

「・・・なにしてるんだ。」

イルーゾォお兄さんいがい、みんなわらっていた。



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