教室窓際後ろから二番目。
それが私の今の席だ。
皆が言うには私の後ろの席、世間では窓際の一番後ろが好みだと言う人が多いらしいが私はそうは思わない。
たかが一番後ろ。
何が魅力なのか分からないが、私にも譲りたくない席がある。
それが、窓際だ。
特に運動場の窓際が良い。
勝手に先に進む授業も、退屈な先生の話しも、青い空と広い景色ともう一つ、大切な想いを見ればもう後はどうでもいい。
今日の二時間目終了時の休み時間に外を眺めるのは、とても幸福な気分だ。

「体育万歳」

「何を言っているかと思えばまた例の"彼"ですか」

「まあそう言うなよみっちゃん。
ほら良く見なくても分かるでしょう、あの人のかっこよさが」

「私には分からない。
と言うかみっちゃんって誰だ。
私にみの字は付いてない!」

外を眺めるふりをしながら目的の人物を見る私の背後に立ったのは長年からの付き合いの友人だ。
友人こと、みっちゃんは私が見ている人物を横目で見ながらも嫌そうな顔をしている。
私からしたら失礼に値するが、みっちゃんにとってはあの人の魅力が分からないらしい。
麗しい彼の良さが分からないとはこの友人は世界で一番損をしているに違いない。

「ふっ、憐れなり」

「何故かよく分からないけど今凄く苛ついたわ」

「そんなことはさておき、今日もなんてかっこいいのだろう。
バスケマネージャーになれば良かった」

「友人を一人置いていくとは、まあそれはさておいて、あんたも物好きだねえ。
私には唯の煩い馬鹿にしか見えない」

「ちょっとタイム。
さっちゃん、私の事も置いていっちゃったね」

「さっちゃんって誰だ。
まああれだお互い様だ。
結果的には置かれてない、寧ろ隣にいる事になる」

くだらない会話をしながらもしっかりと彼を見据える私の目はさながら愛に飢えた盲目の鳥の様だ。
次第に体温が上昇し、顔が熱くなる。
見ているだけでこんな状態になるとは、恋愛経験がなかった頃の私には思ってもいない体験だろう。
現に彼と喋った事がないから、彼と話したあかつきには私の命日は決まるも同然だろう。

「卒倒しそう」

「・・・あのさあ奏、早川のどこが良い訳?」

みっちゃんの質問が頭を駆け巡って沈黙を生み出す。
残り三分の休み時間は時を刻み続けていく。
季節は冬に入るから体育は陸上だ。
運動場を駆け回る彼はいつもと同じ様に大きな声を発しながら走っている。
私は一度目を閉じた。

「あれは去年の冬」

「長くなりそうだから話さなくていいよ」

「放課後、家に帰ろうとして体育館の前を通ったら、扉が開けてあったから横目で見ると早川君が練習してた訳よ」

「喋ったよこいつ。
で?」

「惚れました」

「恋に落ちるのが早いですね奏さん」

授業開始のチャイムが鳴り、さっちゃんいや、みっちゃん、あれどっちだっけ。
まあいいや、友達は席に戻って行った。
体育の先生が来て、生徒は整列をする。
こちらの先生も来て授業が始まる。
社会の授業はよそ見をしていたり寝ているのが見つかったら罰を与える先生なので運悪くもう早川君を見ることは出来ない。
今日の、私にとっての至福の時間は終わりを告げた。


見えない片想い


(おい早川今日の部活の事だが、って何見てんだ?)

(あぁ!笠松さん!
実は別のク(ラ)スが次体育なんでそ(れ)を見て(る)んです!)

(見る程の体育なのか?
まさか好きな女子でもいるとかじゃないだろうな?)

(んなっ!!?)

(案外奥手なんだなお前)











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海常好きです!
特に早川さんが好きですが、分からねえ。
と言うか出てない。
出てるけど台詞少ない。
あれ、おかしいな。
前が霞んで見えないや。













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