授業と授業の合間の休み時間。
一時の休息に、誰とも話す事もなく机に平伏して目を閉じて寝ようとすれば隣の席から声が聞こえてきた。

「なあ山添さん」

「何だい隣の今吉君」

「隣の席な」

私が寝ようとすれば毎回の如く妨害をしてくる今吉君は頬杖を付いてこちらを覗いてくる。
何だこの同級生は。
私の友達も稀に睡眠を邪魔しに来るがこの人程ではない。
もう嫌だ、席替えの日を早めてくれ。
しかし毎度席を替える度に今吉君がもれなくセットで付いてくるのは気のせいだと思いたい。

「それで何か用?
眠かとけど」

「いやな、山添さん寝そうやったから起こさなあかん思てな。
ほらもう休み時間が十分しかない事やし」

「それが休み時間だよ!
お前何や!?
私を邪魔して何か楽しいか!?」

友人曰く、訛りが解けない私は他の人に面白がられているらしい。
東京に来るんじゃなかった、と激しく後悔したのは入学式早々だった事を思い出して懐かしさに浸るが、こんな懐かしさいらねえ!

「ほんまに山添さんおもろいなあ」

厭な笑みを浮かべられて声に出して笑われる。
この人と喋ると体が持たない。
私は怒気を含めた声で今吉君に話す。

「面白くもなんともないわ!
あぁもう、早く授業始まらんかな!!」

「まあまあそう言うなや」

「大体この席も早く替わりたかとに何でいつも今吉君私の隣におっとや!?
意味分からん!」

私が泣き叫ぶかの様に悲壮的に顔を俯かせると、未だに今吉君は笑いながら私の言葉に応えを返す。
信じられない言葉が耳に入ってきた。

「そらまあ、クジ引きで山添さんの隣になった奴等と交換してるからなあ」

「・・・は?」

驚いて目を見開く。
まあ、恋愛経験は生まれてからこの年まで紛失しているから今までは気付かなかったが、まさかそう言う事か。
なるほど、そう考えるのが妥当だ。
何だ何だ、私も本気を出せばモテるじゃないか。

「何だ、それならそうと早く言ってくれれば・・・。
でも私今吉君の言葉は受けとれん「ほんまに山添さんおもろいから!」

「ってそっちかい!」

勢い余って立ち上がってツッコんでしまった。
クラス皆の視線が注がれて恥ずかしさを覚えて急いで席に着く。
視線は途切れたが私は顔を手で覆う。
もうこの世の終わりだ。
既にこの高校に入ってきた時から間違いだった。
将来は気を付けようと思うけど、でも、本当に大丈夫なんだろうか。
嫌だ心配になってきた。

「どうしたん?
そないに悩んで」

「いや、いきなり将来が不安になってきたけん解決策をと」

両手の指を酌み交わせてそこに頭を乗せていると今回の元凶である今吉君が私を心配してか声を掛けてきてくれた。
優しいんだか突き放すんだか分からないよ今吉君。

「大丈夫や。
大丈夫大丈夫」

「その根拠はどこから・・・」

「ワシ、山添さん貰うつもりやから」

「いや、もういいよそんな紛らわしい冗談」

「ほんまやて。
信じてえなあ」

おどけて言うあたりがなんとも胡散臭い。
そして眼鏡だから本当に胡散臭い。
私が今吉君に訝しげな目を向けているとチャイムが鳴った。
先生が教室に入って来る。
授業内容は待ち望んでいた席替えだった。


方言奮闘記


(で、またもや私の隣と言う訳ですね今吉君)

(まあまあ、楽しくやっていこうやないか)

(もう此処んクラス嫌だ)










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ヒロインが喋ってるのは九州弁です。
関西弁が分かりませんでした。
エセ今吉先輩で本当にもうし訳ありません。
関西弁が(以下省略)
今吉先輩がヒロインの事を好きかどうかは謎です。
お任せですよ!
















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