気温が低くなってきた秋。
学校へ向かって朝の練習をしようと体育館へ足を進めた時、体育館から一人女の子が顔を出してきた。
同級生の山添さんだと気付いた時には小さな手を振られていた。

「氷室君おはよう!!
早速だけど私を君のお嫁にしておくれ!!」

「朝から何を言っているんだい山添さん」

早朝、学校に人通り少なくて助かった。
これを聞かれていれば今日は平和に過ごせなかっただろうと苦笑いで返せば、上履きのまま山添さんが俺に近寄って来た。
セミロングの髪がふわふわと揺れる。

「何って決まってるよ!
君の童貞を奪うのさ!」

「女子が男子に言う台詞じゃないよ。
それに誰が童貞だと言った」

「えっ、今さらりと自分がモテてますよアピールをしてきおったな小悪魔め!」

「口調が村の長老並みだね山添さん」

軽く山添さんの言葉を受け流せば受け流す分だけ当たり障りのない返答をくれる。
だから一緒にいても飽きない、寧ろ楽しく感じる。

「それよりも山添さん、上履きで外に出るのは校則違犯だよ知ってた?」

「何を今更!
だからこうしてボイコットをしてるんだよ!」

「答えになってないね」

笑いながら体育館に入れば先輩達はもう練習をしていた。
自分も早く練習しようと駆け出そうとすれば右手を掴まれて体重を掛けられる。
誰であるかなんて分かっていた。

「氷室君やい、氷室君やい。
これを君に贈呈しようではないか!」

俺の右手から離れて山添さんはいつの間に準備をしていたのかラッピングされた箱を手渡してきた。
何だろうと首を傾げるとごほん、と一つ咳払いをした。

「えー氷室君、お誕生日おめでとうございます!」

「え、」

「本当は、『プレゼントはわ・た・し!』みたいになる予定でしたが真っ先にツッコミを貰ったので勘弁してちょ!」

舌を出して謝られても全く謝られてる気がしない。

「ありがとう、でも最初のくだりはいらないな」

山添さんがくるりと回って体育館の出入口へと駆けていく。
後ろから先輩達の「朝からイチャついてんな!」と怒られたが再度手を振る山添さんを見てしまう。
彼女は終始笑顔のまま「またね魔王君!」と言って体育館を出て行った。
ランクが上がったと心の中でツッコんで、早速貰ったプレゼントの紐を解く。
蓋を取った瞬間中から物体が飛び出してきて顔に直撃した。


present

(山添さん、見事に顔に当たったよ)

(うん!ちゃんと見てたよ!
はい、これが本物のプレゼントでした!)

(こんな誕生日初めてだ・・・)









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お誕生日のお祝い小説でした。
ヒロインをぶっ飛んだ子にしたくて書いたらこんな、こんな感じになりました。
取り敢えず、氷室先輩!
お誕生日おめでとうございます!!













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