眈々と降る雨を、窓際の席の子が眺めていた。

不思議な彼女

少し冷える教室は、まだ暖房が付けられたばかりで、周りはマフラーやコートを着た生徒が談笑していた。
俺はその声達を耳に入れつつ自分の席へと着く。
朝の時間はまだ始まったばかりで放課後の部活動の時間は数時間も先だ。
早くバスケがしたいと思いつつ、文庫本を出す。
名前も知らない作者の本を図書室で見つけ、あらすじに惹かれて借りた物だ。
何枚も捲ったページに落とす。
しかし、気分ではなく本を閉じて時計を見上げる。
教室に入ってからほんの数分しか経っていない。
次に窓へ目を向ければ暗い空の下、雨が降っていた。
実に重い空だ、と考えていれば自分と他に窓の向こう側を見つめる女子生徒の姿が斜め前の席にあった。
クラスメイトの山添さんだ。
山添さんはいつもと言っていい程に仲の良い友達がいたはずだが今は一人暗い空を眺めている。
何を見ているのだろうと気になり、あまり話をした事がない彼女へ声を掛けてみた。

「山添さん、何をしているんだい?」

「あぁ、氷室君。
うん、雨見てる」

窓から目を離して俺の目を見て話す彼女は驚いた様子も何も無かった。
唯、話し掛けられたから返しているだけと言った印象を受けた。

「雨を見て面白い物でもあるの?」

「ずっと見ているからって全てが面白い訳じゃないよ。
私は、世界が泣き叫んできたな、と思っただけ」

「泣き叫ぶ?
空じゃなくて、世界が?」

「そう。
後もう少しすれば雷が鳴るよ」

また雨を見つめる彼女と同様に俺も視線を彼女から雨へと移す。
数秒経った瞬間に空から閃光が走り、音が鳴った。
驚いて彼女を見ると、彼女は既にこちらへと目を向けていて「ほらね、世界が泣き叫んでるでしょ?」と言って机の中に手を入れて筆箱を取り出した。
どうやら授業の準備をしているらしい。
まだ呆気に取られてる俺はまぐれかと思う様にして読む気が無くなっていた文庫本を広げる。
文字の羅列を追って行く内に山添さんの友達が教室の出入口から現れて颯爽と山添さんに近付いて行く。
そして世間話を始める。

「聞いてよ奏!」

「家から出て10分くらい歩いて忘れ物に気付いて取りに帰ったんでしょ?」

「当たってるけどやっぱり気味悪いよね奏って」

その会話が耳に入ってまた驚く。
彼女は他の子と違うのではないか、と思うが顔には出さずにページを捲る。

「あ、氷室君」

山添さんに話し掛けられる。
平常心を保って「何だい?」と彼女の言葉を待つ。
彼女は一拍置いてから無表情で口を開いた。

「足、気を付けてね」

何かの忠告を俺にして彼女はまた友達と話し始めた。












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不思議ちゃんなヒロインでも絡みが少ないです。
未来とか見えるんですかね、勘ですかね。
その辺りは考えておりませんが、「足、気を付けてね」と言う言葉は後に放課後のバスケ練習の時にいきなり足をつってしまうと言う裏話がありました。
氷室先輩は忠告された言葉を思い出して疑問に思いながら後日ヒロインさんとまた話すと言う裏話第二段もありましたが、発想は自由です。
お目汚しすいませんでした!














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