ダンダン、とボールが弾む体育館は今日も変わらず忙しい。
図書室で見たまだ返されていない本を持っている人物の所へ足を向ける。
部活最中に一人で乗り込むのは恥ずかしいけれど、そう言っていられないのが図書委員会の定め。
両手に拳を作り、意を決して体育館に入り込んだ。

未返済

体育館の中はゲームらしき事をやっているようで皆細かに動いている。
あんな運動を出来ない自分に情けなくなるが、仕方がない。

家は代々文化系の家系だ。
美術部とか茶道等の部類であるからもう諦めはついている。
取り敢えずバスケ部監督、兼クラスメイトのリコちゃんに会って話を通さなければ、と小声で「失礼します」とだけ入って小走りでリコちゃんに近付く。

リコちゃんは練習風景に目を通しているようで真剣な目をしていた。
本当に監督なんだと改めて思い知らされる。
凄いと思いつつ、自分の仕事をやり遂げるべくリコちゃんの肩を叩いた。

「あら?奏どうしたの?」

「えっと、委員会の仕事で本の返却が今日までなんだけどね、まだ日向君が返してなくて」

練習の迷惑になると早口で説明すると「なるほどね」と誰かのシュートがゴールに入った瞬間に日向君を呼ぶリコちゃん。

申し訳ないと思いつつ、本を返してくださいと頼めば忘れていたかのように「あー」と声を漏らす日向君は私に此処にいるよう指示を出して何処かへ走って行ってしまった。

部室だろうか。
リコちゃんは苦笑しながら「すぐだから」と、私に練習を見ていくように言った。
本返却しか仕事がない私はバスケ部の練習を見学する。
皆輝いているな、青春だな、となんともまあ古臭い思考をしている自分に年かよ、と心の中でツッコんでみる。
我ながら虚しい事この上ない。

「おっ、山添か。
どうしたバスケ見に来て」

「あ、木吉君」

後ろから声を掛けられて振り向くと木吉君がいた。
部活熱心であると風の噂で聞いたけれど、部活が始まって数十分は経っている。
先生にでも呼び出されたのだろうか。

「奏は未返済の本の回収に来たのよ」

「未返済?
・・・あぁ、そうか山添は図書委員か」

「図書委員の定めなんでね。
と言う訳で木吉君も未返済の本があります」

なんと言う題名だったかを思い出そうと思考を巡らせる。
とても変な題名の本だった気がする。

「何だっけな、宇宙との交信がどうのって言う本だった気がする」

リコちゃんの顔がひきつった。
一緒になって考えていた木吉君も手をポンと叩いて「あぁ、あれか!」と思い出したようだ。
良かった、生徒の中には何を借りたのか忘れる馬鹿もいるから助かった。

「でも家に忘れてきちまったんだよな」

「なら明日絶対に返してくれれば大丈夫だよ。
あ、それと花札の本とか色々新しく入ったからまた借りに来てね。
図書委員の目標が利用者数を増やす事だから」

一気に言った後に改めて本人を見ると目を輝かせて私の肩に手を振って顔を近付ける木吉君に一瞬ドキリとする。
それからゆさゆさと揺らされる私。
お腹がシャッフルされて視界が高速で変わる。

「おふぅ、き、木吉君、ちょっ、」

「鉄平!奏ちゃんが死にそうだから!!」

「大丈夫か山添!
誰がこんな事を!」

「お前だよ!!」

木吉君の頭を殴りながら来たのは本を取りに行った日向君だ。
その手には一冊の本が握られている。

「本で、人を、叩かないで、くだ、さい」

「ちょっ!
何だお前真面目なまま死ぬつもりか!?」

大きな声が聞こえる。
そしてボールの音が聞こえなくなる。
あぁ、もういいや。
図書委員の仕事、サボろう。
そして私はふっ、と笑って木吉君の頬を叩いた。










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ギャグなのかもどうなのかも分からないこの話し。
最初からこれでいいのか、選手を平手打ちですよ。
ヒロインは何やってるのか。













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