「桜井君、あ、あの、キスさせてください!」

ざわついている教室の中の私の声は少し高く、静かになった教室は私を注目する。
それもそうだろう。
付き合ってもいない人と顔見知りの人達の中でキスをさせてくれと言えば振り返らない者は少ない。
本当はこう言う事は言いたくないのだが、仕方がない事である。
友人達と王様ゲームをしていたのが運のつきだった。
あそこで私が2番を引いていなかったらこんな目に合わずに済んだのに・・・!

「あ、あ、あ、あ、あの、あの、ススススミ、スミマセン!!」

「そうですよね、嫌ですよね、私なんかこの世の中の塵よりもいらない存在ですから・・・」

「いえ、あの、その、違くて、スミマセン!
自分の方が惨めな存在です!
生きててスミマセン!!」

両方共に頭を低くしながら謝りの攻防の後、皆の目線は元に戻っていく。
それでも私達は止まらず、止む事はない。
目的を果たさなければならないからだ。

「お前等、何やってんだよ」

救世主と言うべきか何と言うべきか、私にはよく分からない人物が来た。
来たと言うよりは元々隣に座っている。
眠そうな、訝しげな目をこちらへと向けて頬杖を立てている。
大きな欠伸を一つする青峰君は「で?」と聞いてきた。

「何をどうしたらそんな状況になってんだよ」

「じ、実は・・・」

嘘を付けない私は本当の事を話す。
王様ゲームのくだりから青峰君は大爆笑をしていたが気にしない事にした。

「気になってる奴にキスとか!!
順序を!考えろよ!!」

「青峰君に言われても説得力に欠けると言うか何というか・・・」

未だに笑っている青峰君を一緒に止めようとしてくれる桜井君の方を見ると、顔をこれでもかと言う程に真っ赤に染めていた。
驚いた後自分が言った説明内容を思い出して同じく顔が赤くなった。
正直にも程がある、と頭を抱える。

「似た者同士も大変だな」

と、言いながら席を立ち教室を出ていく。
残されたのは賑やかな教室と無言の私達だけである。
話の切り出しが行方不明のまま口を開閉するが声は出ない。
長く感じられる時間だが、実際まだ1分も経ってはいない。
このままではらちが明かないと、取り敢えず手で目を覆い、相手の顔が見えないようにした。

「あの、桜井君。
えと、キ、キスさせて、ください」

「え、と、あの、あの、スミマセン!
ど、どうぞ!」

視界に何も入らない様に目を固く閉じて、身構えるかのように体を強張らせる桜井君を手を目から退けて見た。
何だか緊張してしまう。
動揺と焦りが入り混じって桜井君の手を取った。
咄嗟に握ったから桜井君も私も恥ずかしさが増す。
あぁ、もうどうにでもなれ!と私は桜井君の手の甲を自分の唇へと持っていき、そのまま触れさせる。
ある意味キスであると言い聞かせて急いで離し、深く頭を下げた。

「桜井君、ごめんなさい!
ありがとうございました!」

私は桜井君の言葉も聞かず、振り返る事も出来ず唯々無我夢中で教室を出た。
取り敢えず私に命令をした友達を殴りに行こうと決めた。


罰ゲーム


(どうだったよ良)

(や、)

(や?)

(柔らかかったです・・・!)

(お、おう)













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阿呆な話になりました。
まだやったことない王様ゲーム・・・。
そんな事は置いておいて、桜井君可愛いなあ、おい。
負けず嫌いとか可愛い過ぎるだろ。
料理も出来るんだぜ。
可愛い過ぎる・・・。














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