日曜日の朝。 降水確率10%の天気は気持ちが良い程に和やかで。 こんな日は一日中眠っていたい。 布団の中でもぞもぞと動きながら目を閉じる。 あぁ、もう少しで寝れそうだと意識が遠退くぐらいの絶妙な瞬間、扉はノックも無しに豪快に開け放たれた。 いきなりの特大の音に驚いて上半身を起こして私の部屋に入ってきた人物を見る。 掃除機が見えたからお母さんかと思ったら、兄だった。 そして不機嫌な雰囲気だ。 嫌な予感しかしないのは気のせいだと言い聞かせながら再度また布団を頭まですっぽりと被る。 「さあ行こう夢への掛橋へ」 「今起きるか、戻って来る事なく永眠するか、どっちがいいかよく考えろよ馬鹿妹」 兄がベッドへ近付いてくる。 いやいや、そんな選択肢ならもう答えは決まっている。 馬鹿なのかこの兄は。 「勿論永眠で!」 「よーし歯くいしばれ!!」 「そう言いつつも何もしない事は分かってるよお兄ちゃん」 目を瞑ると見えてきた虹の上。 私は今日此処で遊ぶんだ。 仲の良い兎さんや、栗鼠さん達とお手手を繋いで輪になってぐるぐると永遠に遊ぶんだ。 うふふと夢心地で寝ていると頭に猛烈な衝撃が舞い込んできた。 かち割れるかと思った頭だが、良かった無事だ。 縦に割れてない。 「掃除機で叩くなんて兄貴は実の可愛い妹を殺す気か!!」 「ナルシストな妹に何か興味はない。 さあ働けミジンコ」 「きよ兄が背高いんじゃボケ!!」 兎さん達にお別れをした頭を擦りながら兄を睨む。 兄はそんな私をあしらうかの様に見下していた。 最悪だな家の兄は。 「で、何すんの。 こんな日曜日の晴れ間から」 「お前は日曜日を何だと思ってんだ」 「休息の時間」 「お前!それいつもだろうが!」 右手で額付近を叩かれる。 この兄はただ単にストレスの解消を妹を通してやっているのではないかと疑問に思ったが、まあそんな訳はないだろう。 そう思いたい。 そう、思いたい。 「はあ、大坪とその他が此処に来るんだよ」 「えっ、馬鹿兄、間違えた。 あんちゃん大坪さん来るの? えっ、大坪さん来るの?」 「おい今わざと間違えただろ」 しつこくも私が兄を馬鹿と言った事に対して言い寄られるが、この際兄なんて関係ない。 やった大坪さんが来る! 歓喜して急いで洋服を取り出して、寝間着から私服に着替え始めた。 髪型はどうしよう。 サイドテールかそのままか。 「普通男がいる前で着替えるかよ・・・」 「だって大坪さんが来るんだぜ? 組長の部下なんて今どうでもいいよ」 「部下は余計だろ。 組長だけでいいだろ」 「うるせえな宮地。 お前は黙ると言う言葉を知らないのか」 「辞書には載ってある。 と言うか、本当言っとくがお前も宮地だからな」 着替え終わり、今日の髪型も決めた。 そして関係ないが自分のベッドを綺麗にして完了。 私の部屋よりも綺麗な兄の部屋を掃除するなんて気が引けるが、まあ仕方がない。 大坪さんに会えるんだったら私は何でもやるさ。 それが例え兄の命令でもやってやるさ。 「ボスよりもお兄ちゃんみたいな大坪さんにお菓子貰うんだあ!」 「実の兄の前で言うとは・・・。 でもやはりお前は気付いていない。 大坪が毎回の様にお前に菓子を与えているのは唯の餌付けだと言う事に」 「絶対ちげえよ! 大坪さんは頭だって撫でてくれるんだぞ! 兄ちゃんやってくれないだろうが!!」 「兄に何を求めてるんだこの妹は!?」 下の階へ行きながら兄との小競り合いに勝利を掴みそうなこの状況を楽しむ。 いつも負けっぱなしの私ではないんだよ! 嘗めるなよ兄風情が! 洗面所にて身支度を整えて、次いでに雑巾を絞る。 掃除機を持っていたし、床を丁寧に拭けばアレルギーやら何やらを引き起こす心配は皆無だろうと再び二階へ上がる。 階段を途中まで登るとふと頭に重みが加わった。 何だ肘おきか何かかと兄の方を見れば、唯手を置かれているだけで何がしたいのかさっぱり分からない。 「阿呆、何してんの阿呆」 「二回も言いやがったな」 「はっ!」 「よし、刺す。 絶対に刺す!」 日常茶飯事な会話を聞き流して兄の部屋へ入り、雑巾片手に床へ投げ捨てると兄は代わりに私に蹴りをくれた。 いてえなあ、目潰しすんぞ! チョキの形で立ち向かおうとすれば頭を掴まれて制止された。 結局、この日も兄へ勝てなかった鬱憤を晴らす為に、再度雑巾を床へ投げ捨てた。 天空爽快 (おじゃまします) (大坪さん待ってました!) (久しぶりだな。 元気だったか?) (あれ、宮地さんの妹っスか?) (そうだよ・・・。 何で大坪になついたのか) (ぶっは! 苦労してますね宮地さん!) (うん、高尾マジ轢くわ) (木村先輩は遅れてくるそうです) (おう分かった) (ちょっ! 宮地さんの妹ちゃん面白いっスね!!) (ぎゃああああ! 兄貴何この人!!) (今日は五月蝿くなりそうだ・・・) ーーーーーー 兄妹夢は書いてみたかったし、兄妹の小競り合いを見たかった願望でこの作品は生まれました。 取り敢えず、大坪さんは餌付けの為にお菓子をやっている訳ではありません。 ←→ |