料理と言う物をこの方数年やっていなかった私が久しぶりにキッチンへと立ち、仁王立ちしたのが昨日の夕方。
やっと完成した食べ物は夜中に出来て、その頃には家族は夜ご飯を食べる事すらままならず安らかな眠りに就いたのには私は見てみぬふりをした。
買ったばかりの包み袋にその料理を入れて、不器用ながらも自分なりに綺麗にラッピングまでした。
人生の中で数回しかないんだろうなと言う思いで作った料理を、今目の前にいるにゃんこに話し掛けていた。
にゃんこは冷や汗をながしつつも私への返答を考えていいるようで薄目だ。

「えと、うん。
気持ちは分かるんだけど、夕方から深夜まではさすがにないでしょ」

「あるんだよこれが。
そして作ったは良いんだけど、私の心はガラスのハートだから勇気がなくて渡しにいけないから、頼むコガにゃん!
これ水戸部君に渡して!」

私が今差し出したのは昨日私が端正を込めて作ったクッキーだ。
流石に水戸部君の様に上手く作れないから自信はそんなに無いが、私は頑張った。
でもこればかりは頑張れない。

「いやいやこれは自分から渡す方が気持ちが込もって良いに決まってる」

「コガにゃんは知らないだろうけど私のハートは触ったら燃え付きちまうんだよ」

「何それガラスじゃなくて紙じゃん!」

「違う!ジ○ーだ!」

「色んな意味で気合いあるから大丈夫じゃない!?」

的確なツッコミにも私は動じず、唯私はプレゼントを机に置いて立ち上がった。
コガにゃんも私を追う様に急いで立ち上がる。
そして後ろを振り向いて、「水戸部!」と叫んだ。
おいこらちょっと待て!
私は急な展開にコガにゃんの頭にチョップをすれば変な声を漏らした。
それと同時に水戸部君が現れる。
私は至近距離での水戸部君に頭がくらっと揺れた。

「い、痛い・・・」

「わざわざ呼ぶのがおかしいんだよ!」

私達のやり取りに水戸部君は慌てた様に仲裁する。
その姿を見ただけでも私は昇天しそうな程だ。
ここで死んでも悔いは残らないであろうと私はやけくそになって、机に置いたプレゼントを水戸部君の前に突き出した。
コガにゃんは痛そうだった表情から一変、にやにやとした表情になって私を見る。
くっそ覚えてろコガにゃん。
私は絶対お前を許さない。

「み、水戸部君、あの今日誕生日って聞いたから作ってみたんだけど、く、口に合わなかったら叩き付けていいから!!」

我ながらにこの台詞はない。
最後に至っては唯のストレス発散だ。
誕生日と何ら関係がない。
コガにゃんはまた表情を変えて、「こいつ何言ってんだ」と言う顔をしていた。
決めた。
今日小金井に目潰しする。
それがお前の私に対する刑だ。
そんな本当に関係のない事を考えていたら手に持っていたプレゼントが無くなった。
正確に言えば取られた。
誰に?
それは勿論私が敬愛する水戸部君に。
水戸部君は柔らかい表情を浮かべて笑っていた。

「ありがとうだってさ」

通訳なのかコガにゃんがそう言ったのは聞こえた様な聞こえなかった様な。
取り敢えず、死んでも悔いはないと言っていた私が今瀕死の状況だ。
命日とはこの事か。
私はその天使の様な微笑みを最後に見ながら、後ろへと倒れた。


本気出すぜ!


(!!?)

(水戸部今山添に触るな!
燃えちゃう!)

(!!!?)

(我が人生に悔い、無し・・・)

(しっかりしろおおおおおお!!!)











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また間に合わなかった誕生日!!
そして小金井先輩がかなり出てる!
しかし、水戸部先輩おかん!天使!
そして何より、誕生日おめでとうございまぁああぁああぁあぁああす!!












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