アクセル・RO
2016/05/25 21:57


幸せな事しか描いてない絵本を、寝てしまうまで読んでいた。
腕に抱えたまま目を閉じてしまっていたせいか腕が疲れて眠った気がしない。
未だに瞼が落ちてしまそうな中、緩く抱き締められている現状に身体を更にすり寄せた。
まだ眠っているアクセルの体温を感じながら絵本を手放すと、昨夜面白おかしく読み聞かせをしてくれた声をふと思い出す。
ハッピーエンドも幸せになり切れずに血の惨劇になってしまった白雪姫の話をひゃっひゃ、と笑いながらアクセルは頭上から私に向かって読んでくれたのだ。
それからどうやって眠りに就いたのかは覚えてはいないものの今こうして向き合って目を瞑っていたのだから確かに睡眠は摂っていたのを改めて思い知る。
軽くなった両腕でアクセルの服を若干摘んで目を再度閉じるも、その絵本の最後が脳裏を過って出没する。
時間が何故か気になって時計を確認するともう朝の8時半を回っていた頃だった。
二度寝をする場合ではないと思いながら無理矢理に身体を動かし、アクセルを起こそうと試みる。
しかし肩を揺すっても耳元で囁いてみても一向に起きる気配はない。
秒針が只管進む音が耳元に入ってくるだけだ。
どうしようもないなと思う瞬間に、目に飛び込んで来る白雪姫。
林檎を口にして仮死状態になった白雪姫に口付けを王子がすることによって目を覚ましたあの話を思い出す。
確かカエルの王様も口付けで人間に戻ったのではなかっただろうか、と次々に唇を合わせる話が思い浮かぶ中試してみるのもアリなのではないかと、滑り落ちてくる髪を抑えて態勢を屈めた。

「ちゅーしたらあっくん、起きる?」

一応そう告げても返事は返ってこない。
聞こえるのは寝息だけだ。
仕方がないな、と思いながら軽く開いている口に私のを押し当ててみた。
一秒から二秒程の時間の後離して様子を伺うが、なにも変化はありはしない。
所詮本の中だけだったか。
そんな事を思いながら目を開けてくれないアクセルに残念がりながら私もまた眠ってみようかと、定位置について抱き着きながら諦めた。





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