アクセル・RO
2016/04/19 20:15


幻想漂う夜に塗れた森の中で純白のドレスを身に纏い、貴方の目の前に身を曝け出す。
似合いもしない綺麗に整頓された服を着こなす貴方に手を取られ暫しの間視線を交わらせた。
月の光に照らされた蝶がとくとくと辺りをお下劣な程に飛行しながら鮮やかに鱗粉を振りまいている、そんな夜半にも等しい暗がりであった。
美しい落葉樹の元に貴方から手を離して膝をつき祈りを捧げた。
ひらひらと零れ落ちていく葉の柳緑花紅も甚だしいこと。
美しい色をした葉でありながら枯れていくその葉の上にてもう一度貴方の手を取り、レトロに踊り回る。
くるりぐるりと、立ち並ぶ落葉樹の幹と言う幹を掻い潜り一晩中踊り明かそうとでも言うように、時間が 貪欲にも過ぎていく。
潔白から闇色に姿を変えるドレスを情景に、以前の貴方が発した「魔性のドレス」と言う単語を思い返しながら鼓動が鳴り響いていく。
全く罪な方だ、と思う事は何度目であるだろう。
葉の擦れ合う歌い手に、全ての醜悪を送ってやりたい。
それ程までに貴方と共有する時間が細やかに愛おしいと、私だけ想い馳せる事が既に私の罪であり、罰なのだ。
片目をくり抜いたかのような月がそんな私に向かって嗤う。
貴方には見えはしない。
その月は貴方の真後ろなのだから。



化粧を施した人形のようなお前が、溶いた果実のように項垂れる。
不埒にも才色美を滲ませる落葉樹の一端がくるくると狂い悶えている。
そんな中煌びやかに色を変えるお前のドレスを持ち堪えて更に踊り続ける幻想歌に酔いしれた。
白々と輝く無知なお前が穢れきった俺の、瓶の蓋も同然な面白くもない出来事に付き合ってくれた、たったそれだけの存在であったとしても今ではそれが恐ろしく心地の良い夜風だ。
周りの見えぬ盲目な俺が今を持ってお前にだけは心から愛おしいのだと、そう一人想う。
死体だらけのこの場所の、星がギラギラとキバを剥く下でいつまでも踊り明かそうと、そう伝える。
表情一つ変わらないお前が俺の存在を壊そうと思っていることを承知の上で投げ掛けた言葉。
そんな事を言っても無駄だと、言わなければならないのだと、そんな感情の口論で胸がささくれ立つ。
そう感じてしまうくらいならば、愛も情も全てを眠らせて共に生きようか。
鈍くなった頭のままでお前の手の甲に一粒の口付けを送る。
ぐしゃり、と俺の足下に墜ちていくお前の側に寄り添う。
重い、鉛のような心臓を二人で共有しようと、そのドレスを抱え上げた。
肉体のなくなったお前を、只管に抱き留めながら永遠に歌でも紡いでいこう。
この終わらない庭園で。





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