アクセル・RO
2016/03/01 02:38


「貴女も哀れですね。
あんな人に好意を持って。」

あの二人組みが今を過ごしていると言う建物は妙にさっぱりとしているのには流石に感心を示した。
大方掃除をしているのは彼女だろう。
アクセルはそんな事をマメにやる体質ではないだろう。
埃まみれで、泥を被り、不健康そうに穢れを纏いながら生きていくしかないヤツの介護なぞ、このエゴの塊であるシスターには充分な程お似合いだ。
似た者同士は引かれ合うのが宿命か、と鼻を鳴らしながらそう言葉にした瞬間にもキッチンに向き合って珈琲でも淹れようとしていた手は何処から取り出したのかフォールディングナイフが今正に私の横を通り過ぎては壁に浅くとも刺さった。
空を切る以外にもなにを切ったのか分からないそのナイフの柄を握っては抜いてみる。
毒もなにも仕込まれていない、まっさらな折りたたみ式の綺麗なナイフであった。
そんな美しさ余るものを、薄汚い嘘を羽織るシスターが手を差し伸べる。
表情一つ変えない様が中々に癪に障った。

「すいません。
そこに虫がいたものですから。」

「そうですか。
それはありがとうございます。
さぞ厭な虫だったのでしょうね。
・・・しかし、貴女に殺されるなんて、全く運の付いていない虫だ。」

憐れで仕方がない。
そう嘯きながら小さくなったナイフのような物を彼女へと手渡す。
大人しく受け取った彼女の肌はヤケに白く、今にも息を引き取ってかくれんぼでも始めてしまいそうだとそう感じる。
死ねばいいのに。
流石に口にする事はしないが、そんな願望を眼差しで示す。
相手はそんな私に気付いているのか、そうでないのかは分からないが不服そうに唇の端を曲げているのを目にすると不思議と気持ちが安らぐのは、私が彼女の事を良く思っていないことに由来するからだろう。
彼女も私の事は嫌いに違いない。
これは運命にも近かった。

「私への悪口は構いませんよ。
例えそれが神への冒涜だったとしても気にはしません。
・・・ただし、アクセルの事だけは悪く言わないでもらえますか。
私は沸点が低いので色々大変ですよ。
かくれんぼが始まらない内にどうぞ。」

「それはそれは面倒な事になるのでしょうね。
貴女がそう言ってしまうぐらいなのですから。」

暫しの沈黙の後に近くなった距離を遠ざけるが如く彼女はキッチンへと再び舞い戻った。
そうしてなんでもない風に珈琲を差し出される始末であり、私はそれが狂おしい程に壊したくなって仕方がなかった。





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