アクセル・RO
2016/02/01 02:12


ふわり、そう落ちてくる雪の一つが女に覆いかぶさる。
動かずに、じっとして、声や呼吸でさえも押し殺すように呆然と立ち尽くしている。
何処を見ているのか分からない目はただただ、真っ直ぐに伸びているだけだ。
修道服から放り出された手は真っ赤になり、今にも血が噴き出してこないかと不安が募った。

「風邪を引くぞ。」

返事が返って来ず、その死にそうな手を自分のと重ね握り締めた。
頭に落ちている雪を払い落とし、そのまつ毛に乗った雪にも触れる。
無慈悲にも冷たいその温度が黒服の女の体温を奪っているのかと思えば何故だかやるせない気持ちが胸中を占めるが、これは今に始まった訳ではない。
雪が降るといつもこうだ。
なにかに思い耽るように、動かなくなるのだ。
それは毎年のことであり、儀式のようでもある。

「アクセル、雪が降ってる。」

唐突に口に出されたその声は消え入りそうな程小さい。
声だけではなくこの白い風景に元シスターという輝く存在が丸ごとなくなってしまいそうだと、らしくもなく思う。

「冬だからな。」

「あの日みたい。」

そうして僅かに微笑むソイツは漸く俺の手を握り返して返事を零す。
あぁ、だから雪が好きなのか。
酷く冷たい身体を一歩前進させながら嬉々として帰路を二人で歩むのもたまには良いものだろう。
そう思うのは俺だけだろうか。





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