虹村形兆
2016/01/27 00:00


椿の花がぼとりと、地面に落ちた。
なんの香りもせずに赤い花弁がぐしゃりと雪の上で広がっている様はオレンジを握り潰したものと酷く一致していた。
君のいない冬は何故だか寂しいよ。
誰に言い聞かせる訳でもなく内心そう嘯いてみるも、やはり返事はやって来ない。
誰も私の心の内を知りはしないのだ。
固い雪を素手で掘る。
焼ける指先を気にもとめずに無心に掘り続けた。
浅くとも凹凸の出来たその場所に散らばったオレンジの破片をその雪の奈落へと蓋を被せて墓を建てる。
あぁ、これは私のものだ。
今日の私を殺したのだ。
明日になれば新しく生まれ変わる。
そのサイクルを一生繰り返す。
そう死んでしまった彼に投げた。

「意気地なし。」






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