アクセル・RO
2016/01/15 03:57


白い息が凍るのではないかというぐらいに寒い夜道を二人で手を繋いで帰る。
お互いがあまり熱を持たないせいか一向に温まる気配はなかったが、その輪郭に触れているというのが重要なのだと思う。
昔から手を繋いではいたけれど、やはりなんでもない風に握り締めてしまうのがよほど嬉しく感じてしまう。
もふり、と首を保温してくれるマフラーの下で幸せがこぼれ落ちた。

「寒い。」

すぐ隣から落ちた言葉に耳を傾けては「そうだね。」と返す。
会話が少ないのも今に始まったことではない。
私達は今も昔もこれで丁度良いのだ。
付かず離れずなこの距離が恐ろしい程に愛おしいと、感覚が鈍ってしまうぐらいに依存してしまっている。
もう二度と離れたくはないと、叶わぬ願いも持ち合わせているのだ。
重症であった。
だから昔出来なかったことを、後悔のないようにしておこうと、この世に生まれ落ちてからずっと決めていた。
マフラーを少し緩めて、私より背の高い貴方へと爪先に力を込め、背を伸ばす。
触れる唇は手なんかよりも冷たく感じたが、私はそれで充分だ。
少し気恥ずかしいだけである。

「いきなりだな。」

「突然です。」

そんな会話も飲み込んでしまうように今度は向こうから唇を塞いでくる。
隙間なく密着した口の中に入って来る舌を拒んだりは決してしない。
歯の羅列をなぞったり、舌先から根元まで絡めて来るのはいつも新雪に足跡を残すような好奇心と高揚感に似ているな、と思ってしまう。
息が詰まってしまいながらも楽しいと感じるあの感覚だ。
不思議なその感触に舌鼓をいつも打っている内に最後、唇を食まれて終わってしまう。
恥ずかしさは残るものの、やめられないものがある。
この事は、本人には言わないけれど。

「温まった?」

「温まりすぎた。」

「それは良かった。」

首元をまたマフラーで隠し、繋いだ手を握りなおして帰路を歩む。
確かに、先程より体温が高くなった気がする。
それに足取りが軽やかだ。
昔もこんな事をしていれば良かったと思いはすれど、昔は昔で今は今なのだと思えばやはりこのままで良いと、そう思った。





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