虹村形兆
2015/10/23 22:06


「あの先生嫌いなんだよ。」

そう吐き捨てたセリフに聞く耳持たずなまま虹村さんは窓の外を見やる。
薄目を開けた視界から覗く虹村さんは今日もにこりと笑わない。
不満ではないけれど、何を話しても同じ表情を貫くのは相当難しいことなのでは、と紙パックに入ったココアをストローを使い啜った。
相変わらずな雰囲気で話を進める。

「分からない人に当てて来るんだよ!
意味が分からないよ!!
先生も問題も意味が分からないよ!!」

「じゃあ勉強でもしてろ。」

冷たく言い放たれた言葉を受け流しつつコンビニで買ったお菓子を頬張る。
虹村さんも中々意味が分からない。
実はこんな事を言っておきながら虹村さんもバカなんじゃあないかとしたり顔で今日貰ったプリントを投げ付けた。
鉛筆も用意して虹村さんに突き付ければ、「またアホな事をしてるな。」みたいな顔をされたが私は気にしない。

「この問題解いてみろよ!
ほらほらどうした!!」

「またアホな事を・・・。」

ぶつくさなにや、ほざいているがそれは負け犬の遠吠え。
どうせ答えが分からずに時間だけが過ぎていくに違いな・・・。

「っておい!!
え!なんで分かるの!?
私ちんぷんかんぷんなのに!!?」

「お前みたいなアホ頭とは違うんだよアホ。」

したり顔で吐き捨てられて数字で埋まった宿題を手にとって凝視する。
な、まさか、何故、見た目ヤンキーの塊である虹村さんともあろうお方がこんな問題を・・・。
てっきりバカだと思っていたのに・・・。
そんな事を言えるハズもなかったのに、その後理不尽にも頭を叩かれた私は今日も楽しく青春を謳歌しています。





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