マジェント
2015/10/03 01:57


急に開けた視界に安堵した。
じっとりと汗が落ちて不快だ。
嫌な夢は見るものではない、早まる心臓を落ち着かせようと深呼吸をして列車の窓が映す風景を眺める。
外は暗雲に包まれながら大雨を降らしていた。
私の過去と良く似た天気で深いため息が出るのは仕方が無い。
不愉快なタバコの匂いが今にも漂ってきそうで吐き気がする。
本当に嫌な夢だった、と思い起こしながら向かいに座るマジェントを見やった。
バカ面のまま何事もないように眠っている。
呑気で羨ましい。
口に出さずに眠れない体を引きずってマジェントの隣へ腰を下ろしてみた。
意外にも彼の寝息は静かで、座っているせいか身動きも少ない。
だから傾いている肩に頭を置いてみた。
不安定でバランスを崩しそうだけれどどこか安心する。
目を閉じてみると眠れそうな心地よい体温をしている。
眠れなかったが、マジェントの隣だと良い夢を見れそうでまどろんで来た視界をゆっくりと閉じた。



目を覚ました瞬間、左肩に違和感があってそっと隣を見てみると、向かい側で寝ていたヤツがいた。
嫌な夢かなんかでも見たのだろうか。
せまい席に腰掛けて来る程の理由がなにかあったのだろう、あまり直接的に甘えてこないコイツが俺に頼ってきてくれるのが驚いて、でも嬉しくて笑みが灯る。
相手を起こさないように態勢を整えながら、体の安定を図った。
寝やすくなったのか、相手はそのまま眠り続ける。
それに満足して窓の外を見ると雨が弱く降っている。
こりゃ晴れるな。
内心で呟いて息を吸った。





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