ヴァニラ・アイス
2015/09/13 22:13


毎日の生活の中でヴァニラさんの姿を見ない日なんて一度もなかった。
ヴァニラさんから逃げ回っていた頃も、ヴァニラさんの事を好きになった頃も付き合っている今も。
必ず廊下で擦れ違ったり、テレンス様とお話している姿を見たりと、本当にヴァニラさんを見ない日なんてなかったのに、今日はまだ出会っていない。
もうお昼の3時になるというのに。
手に持つモップの柄をぐっ、と握って寂しさを我慢しては息を吸い込んだ。
一生会えない訳ではないのだから気にする事ではない、そう言い聞かせてまだ終わらない仕事を片付けるために歩き出そうと足を一歩前に踏み出したところで背後から私を呼ぶ声が一つ。
先ほどの恋しさが大きくなって一気に視界が滲んだ。
少しの間会えなかっただけでこのようなあり様では笑われてしまう、けれどそれでも構わない。
勢い良く後ろを振り返った私が目にしたのは色とりどりの鮮やかな花束だった。

「摘んできた。
少々、歪になってしまったが・・・。」

真っ直ぐ合う視線に思わずモップを落としてしまったが、そんなことを気に留めることなど出来なかった。
嬉しくて、でも驚いて、目尻に涙を溜めながらも綻んだ。

「私、ヴァニラさんから貰ってばかりですね。」

「これからもまだ贈るつもりだ。
だから受け取ってくれないか?」

花束を受け取るのと同時に軽く抱き締められる。
あぁ、本当に私は幸せ者だ。
頭を撫でられながらそんな事を思う。
好きです、そう微笑みながらヴァニラさんに感謝した。

「喜んで。」





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