ヴァニラ・アイス
2015/08/15 13:11


「ヴァニラさん、あの、キスしてもいいですか?」

たまには積極的に、と教えてくれたのはマライア様とミドラー様だった。
結局キスもハグもヴァニラさんが先にしてくれる為に私から行ったことは数を数えるぐらいしかないように思う。
それには何故か皆さん分かっていたようで、疑問と共に顔を赤く染めた。
目の前に立つヴァニラさんは首を少し傾けながらも私の目線に合うように腰を落としてくれる。
更に距離が近くなったことで焦る気持ちが増す。
落ち着け、目を軽く閉じた。

「しっ、ししし、失礼します・・・!」

「ん。」

短い言葉が返って来た安心感を後押しするように顔を近付けた。
緊張で目を閉じているから、ヴァニラさんの口がどこにあるのか、分からない。
でも、この辺だったハズだと、そのまま唇を押し当てた。
当たった感触で言うなら口の端であるような、しかし恥ずかしくてそれどころではなくて顔を離す。
反応もなにもないヴァニラさんを伺う為に恐る恐るにでも目を開くと、珍しくもヴァニラさんが笑っていた。
その表情が嬉しくて、でも不安になって少し固まる。
キスに良し悪しがあるなら、多分今のキスはダメなものだったのだろう。
でも、微笑んでいるヴァニラさんを見るのは好きだ。
思わず緩く抱き着く。

「ダメ、でした?」

「いや。」

背中を撫でられてあやされる。
熱い体には刺激が強く、更に赤みが増してしまうのはやっぱり、ヴァニラさんだからだろう。
安心しても恥ずかしい。
でも、嬉しい。
好き、言葉に出せずにそう思った。

「廊下のど真ん中でなにいちゃついているんですか。」

「んえっ!?」

少し離れたところから声が聞こえ驚いた。
あの声はテレンス様だ、と急いで離れようとした私を逃がさないようにがっちりと抱きとめるヴァニラさんに心臓が爆発しそうだった。

「羨ましいか。」

「なにバカなこと言ってるんですか。
惚けたこと言ってないで早く持ち場に戻ってくださいよ。
そして凄い羨ましいです。」

そんな会話を聞かされる私にはどうすることも出来ず、未だそう言う話を続ける二人から解放されたかった。
しかし言葉に出来るハズもなく、なす術もないまま会話を聞くしか私には出来なかった。





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