ワムウ
2015/08/06 22:18


「いやー、シーザー君かっこいいね〜。」

いきなりなんの脈略もなく出て来た言葉に、何故あの勇ましい戦士の名を知っているのか、というよりも男に全くと言っていい程興味のないコイツのかっこいいという単語に思わず振り返ってしまった。
いや、俺には関係のないことだと言い聞かせても未だかっこいいと言い続けるコイツになんだかイラつきを感じる。
なんだこの無性にやるせない気持ちは。

「何故お前がシーザーの名を知っている。」

「今日の日帰り実家帰りの際に読んできました。
彼の家族愛は素晴らしい。」

俺のテンションは今貧民街時代に戻っている!とか言い出したコイツにとうとう頭を抱えた。
人によってセリフがこんなにも台無しになるものだと改めて気付かされる。
俺の知る気高き熱い男が段々貶されていくようである。

「いやー、シーザー君かっこ良かったけど、私はジョセフ派かな。」

「ジョセフ、ジョセフだと?
俺の立場は一体どこなんだ。」

「えっ、なんでワムウが出てくんの?」

さも不思議そうにアホ面で尋ねてくる様子にため息を吐いた。
俺の方がお前と共にいる時間は長い方だろう、とは言わないが釈然としない。
胸中がもやもやとしたなにかで埋め尽くされる。
こんな気持ちは初めてで、取り敢えずこの女を投げ飛ばすことが出来れば清らかになりそうではある。
試してみるか、立ち上がった瞬間に開かれた口。
容赦はせん。
伸ばす手をヤツの肩口に置いた。

「ワムウは、そうだなぁ・・・。
一緒にいる方が私はいいな。」

動きが止まる手。
ペラペラとなにやら言っているが内容が頭に入ってこない。
最後に聞こえた「面白いしね。」が耳に響くが意味が分からなかった。
取り敢えず、興がそがれた。
肩に置いた手も退けて田畑広がる景色に目をやる。
なにもないといえばなにもない。
眉間にシワが寄った。

「今日なに食べる?」

「吸血鬼。」

「くたばれ。」

いつもの会話も普通だ。
戦う気力を持っていくアイツの方が人間離れしていると日々思う。
食えないヤツだ。
ジョセフと良い勝負である。
腹の立つ性格をしている。

「肉じゃがでいいか。」

結局、俺の意向は無視される。
だから毎日のように慣れた手付きで頭を叩くのだ。





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