リキエル
2015/07/29 01:05
「わぁっ!ウサギさん!!」
あれから数日、結局また一羽ゲームセンターから救い出したウサギをアイツに贈る。
最初にプレゼントしたウサギは今では俺が巻いたド下手なリボンに、多分アイツが作ったのだろうドレスが着せられていてなんというか、更に可愛らしいことになっていた。
あのリボン取ればいいのに、と思いはするものの、やっぱり嬉しさが勝って言えないままだ。
ドレスを着た白色のウサギはどことなく幸せそうだ。
「おなまえなんにしようかな・・・。」
「名前?
あっちはもう決まってんのか?」
「うん!あのこはね、バトルシュネッガーっていうの!」
名前を聞いた瞬間に走る戦慄。
今なんつった?
バトルシュネッガー?
ドレスを着た明らかな、女の子ウサギに、バトルシュネッガー・・・。
どこかのターミネーターの名前のような頑丈さだ。
「かわいいでしょー!」
「俺はお前のセンスを疑ったよ・・・。」
ニコニコと微笑む相手にため息を吐く。
このままではもう一羽のウサギの名前も大変なことになりそうだ。
こいつだけは助けてやらねばと、名付け親を買って出る。
不満を口にするのかと思ったが、更に顔を綻ばせているのを見ると、あぁ、それでいいのかとしょっぱい顔になった。
「リキエルおなまえつけてくれるの?」
「お前がつけたら可愛いよりもゴツくなるからな・・・。」
「えー、かわいいのに。」
「まあまあ、人によるな。」
灰色のウサギを目の前に考える。
恐らくオスであろうコイツだけはまともな名前にしてやりたいと思う。
さて、どんな名前がいいだろうか、と名付け親を任せてもらえる権利を得たが、ここで一つ困ったことが出てきた。
改めて思い知ったことだ。
それは、俺も俺でネーミングセンスがないということ。
しまったと頭を抱えた頃にはもう遅かった。
「きまった?」
「あ、え、あぁ、うん・・・。」
決まってないクセに口から出た肯定に逃げ出したくなった。
ダメだ、もっと想像力と閃き力が欲しい。
ゲームセンスはやるから、俺にその能力をくれ!と今年一番の強い願いを込めて空に叫びたくなった。
「ふっ、ふうちゃんで、どう・・・。」
だから、オスだってのに!
メスっぽいのは何故だ!
とにかく自分を殴ったあとに穴に飛び込みたい気分だった。
これぞ後の祭り。
これではバトルシュネッガーとも良い勝負である。
「ふうちゃんかわいいー!!
ありがとうリキエル!!」
ふうちゃん、ふうちゃんと連呼しながらバトルシュネッガーの隣へ並べる灰色のウサギことふうちゃん。
明らかにオスとメスの名前が逆な気がするが、ウサギを貰った本人は楽し気にぬいぐるみを見つめている。
もう、いいか。
アイツが良ければそれで。
笑うアイツの近くまで来て、私物のサングラスをふうちゃんへと掛ける。
せめて見た目だけでも男らしくさせてみよう、とこの年になってまでウサギのぬいぐるみ相手に、ふわふわと笑みを浮かべるコイツとたっぷり遊ぶのだ。
-オマケ-
「徐倫ちゃん!みてみて!
バトルシュネッガーとふうちゃん!」
「ツッコミどころが満載すぎて手に負えないんだけど・・・。」