ヴァニラ・アイス
2015/07/04 10:03
後ろから肩を軽く叩かれる行動で背後を振り返った。
すると久方ぶりに拝見した姿が一つ。
喜びのあまり相手の手を取った。
「ダニエルさん!お久しぶりです!
お元気でしたか?」
そう尋ねると微笑んできてくれるダニエルさんは紳士だ。
頭をすっと撫でられれば懐かしい感触に目を細める。
「なにごとも変わりはないさ私はね。
はい、これはお土産だ。」
「それならば良かったです。
ダニエルさんから貰うチョコレート美味しいので好きなんですよ。
ありがとうございます!」
綺麗に包装されたチョコの入っている包みを大事に受け取る度に少しワクワクする。
甘いものが好きな私にとってはダニエルさんから手渡されるチョコがいつも楽しみだった。
甘くて蕩け、口いっぱいに広がる香りもなにもかもが美味しい。
笑顔が崩れないのはそういう理由もあるから。
「あ、ダニエルさん、私がお酒ダメなの知って、ますよね?」
「あぁ、良く知っているとも。」
「あの、前頂いたチョコレートがお酒入りだったので・・・。」
そう。
アルコール入りのチョコを口にしてしまったあの日を思い起こす度に顔から火が出て来るのではないかと思う程に恥ずかしかった。
苦い顔をする私にヴァニラさんが何度深い口付けを交わしてきたことか・・・。
あのチョコの溶ける甘い感覚は最早クセになりつつあってしまった。
恥ずかしい、と熱くなる。
「ワザとだよ。」
「えっ、」
不意に聞こえてきた応えに我が耳を疑った。
あれ、ダニエルさんは、いつの間にテレンス様のようになってしまったのだろうか。
いや、確かに兄弟ではあるものの、紳士とは遠ざかっていっているようで・・・。
心底私は今マヌケな顔をしているに違いない。
「君とヴァニラの仲が少しでも進展すればと思ってね。」
「・・・ず、ズルいですよ。」
初めてチョコを貰った頃から図られていたことだと今更になって気付いた午後だった。