リキエル
2015/06/27 18:07
「おとこのひとっておっぱいすきなの?」
そんな一言をテレビを見ながら言うものだから飲んでいたコーヒーを勢い良く口から噴出してしまった。
急いでタオルやら台拭きを持って来てはコーヒーで汚れた所を拭いていく。
申し訳ないと思える思考回路が今は蚊帳の外だ。
「なっにっをっ!!?」
「だっていまてれびでいってたよ?
ねえリキエルもおっぱいおっきいほうがすき?」
首がもがれる勢いでテレビを見やる。
再放送らしきそのバラエティー番組では確かに女性の胸について談義している。
やれ形が良いだの、やれ大きさが重要だの。
それを見た影響から先程の言葉を口走ったのだろう。
全く、なんと言う話をしているんだ、と口を抑えた。
「おおおおおお前な!む、むむ胸は別にあ、あれだよ!大きさが重要じゃあなくてだな!!大体この番組で言ってるのはその!胸の柔らかさが男を癒すというかなんというかだな!!」
段々滑る口に鉄槌を下したくなる。
ダメだどんどん最低な男に成り下がってくるではないか。
評価が下がっていずれはコイツに「リキエルさいてー。」と言われ離れ離れになるなんてことになったら俺に待つのは死のみだ。
それだけは阻止せねば!と弁明しようとすれば両手を合わせるアイツの姿が目の前に。
「わたしちいさいけどやわらかいよ!!」
そう言って俺の手を掴み少し膨らんだところへ服越しに押し付けられた。
皮膚に伝わる本当に柔らかい感触。
思考が止まる。
「やわらかいでしょ!
リキエルいやされる?」
「あ?え?あ?あ?」
「あ!わかったちょっとまっててね!」
なにも考えられない俺をよそに、俺の手を掴んだままひらひらと揺れるワンピースの下からそのまま手を侵入させてはまたその膨らみに触れる。
いつの間にズラしたのか下着に包まれていない膨らみが直に脳に伝わり、もう癒しというよりは別の感情が起こりそうだ。
「リキエル?」
呟かれる声に熱くなった身体が停止する。
鉄の匂いがする中で後ろに倒れた。
「徐倫ちゃんどうしよう!
たおれちゃった!!」
電話に出たら友達だった。
なにが?と思えば好きな人が倒れたのだそうだ。
しかも鼻血を出して。
だからなにをしたのか聞いてみたら、自分の胸を無理矢理触らせたらしい。
流石にこれには頭を抱えるしかなかった。
「そりゃあ、まあ、倒れるヤツは倒れるでしょうよ。」
「だっててれびでいってたから・・・。」
「鵜呑みにするんじゃあないわよ。」
取り敢えず看病すれば?と今後について簡潔に伝えれば元気な声が受話器越しに聞こえた。
素直な良い子なんだけれど、なにせ言動が直球すぎるから聞いてるこっちが恥ずかしい。
良い子なんだけれども。
魔性と言えばそうかもしれない。
「徐倫ちゃんまたこんどいっしょにあそぼうね!」
「うん、楽しみにしてるわね。」
嬉々とした声で別れを告げて電話を切った。
さて、と伸びを一つしてから自室に戻る為に足を途中まで運んだところで伝えそびれた事に気付く。
「しまった。
膝枕はやめとけって言うの忘れてた・・・。」
かけ直そうか。
・・・いや、まあいっか。
あとでまた電話が掛かって来たらそれでいいか。
そう思って再度自室を目指した。
後々また電話のベルが鳴ったのには別段驚きはなかった。