ヴァニラ・アイス
2015/06/18 13:46


「私、どこが悪いのでしょうか・・・。」

ぽつりと呟いて顔を俯かせるこの子の雰囲気は暗い。
理由はもう分かっている。
あの素直じゃないヴァニラのせいだ。
いつも文句のような言葉をこの子に浴びせるからストレスが蓄積されていく。
発散方法も虚しくないのだろう。
はぁ、とわざとらしく息を吐くと大きく揺れる肩。
可哀想だ。
これじゃあいつまで経ってもこの子はヴァニラに想いを寄せないだろう。

「別にアンタに対してじゃあないわよ。
あの仏頂面筋肉野郎よ。」

「あ、の、す、すいません・・・。
でも、やっぱり私の行動がいけないんですよね。
もう私に不備があるとしか考えられなくて・・・。」

「いや、アンタに問題はないわよ。
そこら辺のヤツらだって不満一つ言ってないんだし。
アイツだけよ。」

思い浮かべる仏頂面。
多分あの表情も苦手なのだろう。
顔を真っ青にして指先に力を入れている。
今この場にヴァニラが来たらこの子は倒れるのではないだろうか。
勿論悪い意味で。
そう考えたらはぁ、とため息が零れた。
どうにかならないものかと悩む。
この子の気持ちがヴァニラに傾かないことにはどうしようもない。
まずはやはりヴァニラ自身を改善すべきだろう。
そうしなければ失恋で終わってしまう。
まぁ、私には関係ないことだが。

「アンタ、ヴァニラのことが嫌いなら別にそこまで悩むこともないんじゃあない?
いずれぶっ倒れるのがオチよ。」

そう言ってこの子お手製のケーキを口に運ぶ。
味も形も最高だ。
流石とも思える出来栄えに舌鼓を打つ。
店に出しても問題のないケーキを次々に食べていけば、ぴんと伸びた姿勢を崩さずに口を開くあの子は依然として顔色は悪い。

「嫌いじゃあないんです・・・。
ただ、私の態度や行動が癪に障るのなら直したいと思っています。
ヴァニラ様の迷惑にはなりたくないんです・・・。」

「なんでそこまでするの?」

ストレスになるなら離れればいいじゃあないか。
口に出さずに相手の返事を待った。
するともごもごと口をさせて、青かった肌の色が少し赤みを増した。
まさか、とある推測が立ち上がったのを私は見逃さない。

「ほ、褒められたいんです・・・。」

絞り出した小さな声を拾って思わず立ち上がってしまった。
これは、まさか、もう、あんな状況でここまで想いを募らせていたなんて。
しかし本人はまだ無自覚なのだろう。
恋心よりは相手に認められたいだけだもの。
これは面白くなってきやがった、と一人笑った。





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