リキエル
2015/05/30 16:31

「お嬢さん、随分酔ってるね?
家まで送ってってあげようか?」

トイレから帰って来たらそんな言葉が聞こえて来てぷっ、と噴き出す。
今時そんなこと言うヤツいるのかよ。
爆笑の波が押し寄せるのを我慢しながら様子を伺っているとテーブルに突っ伏した頭を持ち上げては真っ赤な顔で笑うアイツの姿を見る。
ダメだ、我慢するのもしんどい。
腹が痛い。

「あっははははは!!
さてここでもんだいです!
あなたはリキエルでしょうか!」

「えっ、あの、え?」

「ぶっぶー!
せいかいはじょんくんでしたー!!
ざんねんだねー!
またのきかいをおまちしてるよー!!」

高らかに笑う姿を見ながら笑いを堪えきれずに近寄った。
もう言うこと成すことおもしろおかしく、へべれけなままアイツの肩に腕を回してぐっと引き寄せる。
お互い顔を見合わせては笑い声を大いに漏らす。

「なんだなんだ?
俺を置いて一人で浮気か?
ぶふっ、いいご身分じゃあねえか!」

「ぷっ、リキエルだってようせいさんとあそんでるじかんがながいよ!
もっとけいかくてきにならないと!」

「「ぶっ、ぷっ、くっ・・・。
あっはっはっはっはっ!!!!!」」

テーブルをバンバン叩いて爆笑する。
はぁ、ダメだ。
おもしれぇ!!
愉快極まりない!

「おっ、おかねはらわないと・・・!!」

「こっ、このお金、大統領・・・。」

「「ぶっふぅぅぅぅ!!
大統領無表情あーっはははは!!!」」

「テキサスは?」

「やばす。」

「「ひっ、ふっ、くくくくく・・・!!
ひゃっはっはっはっ!!!」」

こんな俺達を見てからか、ジョンは静かに席を立ちどこかへと去って行く。
更にそれに便乗してコイツが「やせいのじょんはにげだしたようだ!」なんて叫びやがるからどうしようもない。
腹が痛いのなんの。
思考回路にまとまりがない分なにも考えないでいい。
腹に手を当てながら勘定を済ませる。
もう帰らないと笑い死にそうで危なかった。

「ぷぷっ、よみちだからくらい。」

「くっ、く、足元も暗い。」

「リキエルどうしようおもしろすぎるよ!」

「大丈夫だ安心しろ!
俺も面白い!!」

「「だーっはっはっはっ!!!」」

「ねえねえリキエル!
ちゅーしようよ!!やったことないし!」

「おぉ!いいぜ!!
一丁やるか!!」

背中を丸めて唇同士がぶつかる柔らかさにも笑いが込み上げて来る。
今日は笑い過ぎて眠れるか心配になってきた。

「あっはははは!!
リキエルとちゅーしちゃった!!」

「おまっ、笑うなよ!
つられて吹いちまう!!」

夜中だというのにぎゃははと愉快な声を上げれば上げる程高ぶる気持ちは抑えられない。
肩を組んで千鳥足のまま「おやすみ」と言葉を交わして家へと帰った。
今が何時だとか、今日いくら払ったかだとかよく考えもせずにドアノブに鍵を差してから寝床へダイブする。
シーツの擦れ合う音も妙に楽し気で、声を荒げながら朝になったらアイツの家にでも行こうと就寝した。





「やっちまった・・・。
ぼんやりだけどやっちまった・・・。」

次の日、朝日を浴びながら目を覚ましたのと同時に昨日のことがフラッシュバックしてはうな垂れた。
安い店でアイツと呑んだくれた挙句帰り道でキスまでしてしまった・・・。
アイツとの初めてのキスがあれでは向こうだって嫌だろうに・・・。

「うわー、俺なにやってんだよ・・・。
悠長に笑ってんじゃねぇよ・・・。
なにが吹いちまうだよ。
昨日の俺マジでブッ殺すぞ・・・。」

いや、でも、スゲェ柔らかかったな、とあの感触を思い出した瞬間に仰け反った。

「昨日の俺死ね!!」





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