チョコラータ
2015/05/29 01:55


ふつふつと。
煮えたぎるこの想いの行方が一体何処へ行くのかを、私は知らない。
ただ私の知らない所で先生とラグネイアがお楽しみを実践していると思うと気が気でなくなる。
私の体であるのに、人格が私ではない。
先生の事を愛しているのはこの私なのに、ラグネイアがそれを邪魔にする。
あぁ、汚ない汚ない汚ない汚ない汚ない。
薄汚れたポルカプッターナのクセに先生に遊んでもらいやがって!
あぁ、忌々しい。
忌々しい忌々しい忌々しい忌々しい忌々しい!
淫乱なメス豚め!!

「爪を噛むなんて、とんだ趣味を持っているんだな。」

開かれたドアに寄り掛かって聞こえてくる愛しい声に振り向いた。
口角を上げて"私"を見ている先生が視界に飛び込んだ。
噛み過ぎて形の変わった右手の親指を口から離して咄嗟に隠して先生へと歩み寄る。
腕を広げて"私"の体を抱き留めてくれる先生の匂いをめいいっぱいに吸う。
腕を背中に回しても怒らない先生にときめきと熱を感じて息を吐いた。
"私"の頭や背中を撫でてくれる先生。
"私"に微笑みをくれる先生。
"私"を褒めてくれる先生。
"私"を叱ってくれる先生。
"私"だけを見てくれる先生。
あぁ、どれも愛おしい。
今だけは"私"の先生でいてくれる優しい先生。
優しい優しい"私"だけのチョコラータ先生。
安心する。
決してラグネイアには向けない眼差しを今。
たった今、現在、"私"へ向けてくれる先生にこの"私"の気持ちは伝わっているのかしら。
チョコラータ先生にしか向けた事のないこの感情を、先生、貴方は気付いてくれているかしら。

「あぁ、あぁ、ごめんなさい先生。
私、また、爪を噛んでいたのね。
悪い趣味ね全く。
でもね、先生。
こんなクセ初めはなかったのよ?
先生と出会ってから付いてしまったの。
あぁ、あぁ、私ったらイケナイコね。
でも私の事を嫌いになんてならないでほしいのよ先生。
先生が仰るのならば私はこんな趣味は止めるのよ。
先生の言い付けは守るわ。
ワルイコよりイイコの方が先生好きでしょう?
だから私は先生の言うイイコでありたいのよ。」

だってそうでしょう?
ワルイコな私を愛さないでラグネイアを見る先生なんて嫌よ。
その優しい眼差しは私だけにしてほしいのよ。
一気にまくし立てれば私の腕を緩める先生はそのまま私の手を掴むと、ギザギザな親指を冷たい唇へと運ばれる。
私の噛んだ後を更に噛んで歪める爪を感じながら先生はまた微笑んだ。
冷酷な暖かい微笑は"私"の心へと響いて行く。
決して誰のものでもない"私"の心へと。

「噛みたいなら噛めば良い。
それがセーロス自身の個性なのだからなァ。」

指を口元から遠ざけられたと思えば次に唇へと先生のが落ちて来る。
がぶりと歯を立てられる痛みに背中に快楽が走った。
あぁ、これだ。
この身体の震えを私は知っているようで知らない。
痛い、気持ち良い、が頭を占めてきた。
私はそれだけで意識を失う。
それが心の底から嫌だった。

「先生、今日は一体なにをするの?」







補足:ポルカプッターナはイタリア語でメス豚
らしいです。





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -