ブラックモア
2015/05/22 01:40


別に不満があるとかそんなものでもないが、何故ブラックモアが私の隣にいつもいるのだろうかと思う時が多々ある。
私自身この人が嫌いな訳ではないけれど、実際なにを考えているのか分からないし、なんの目的があって私の側にいるのかがはっきりと明確にされていない。
私と居たって犬が三回回ってワンと鳴く面白いことがある訳でもないし、空からお金が降ってくるなんて良いことがある訳でもない。
本人に聞いてみても「それは貴女が好きだからですよ。」と大真面目に言われたっきりだ。
それから益々離れてくれない。
まぁ、離れなくても良いのだけれど、私から離れてくれる術を知っておいた方が良いだろう。
一人になりたい時などに最適だ。
だから私の昔話でも聞かせてみようと思った。

「私さ、多分生まれてきてから常に男運がないんだ。
父親は私とか母さんに虐待三昧だったし、学生の頃付き合ってた男の子は被害妄想が激しくて常に私を責め立てたし、担任だった化学の先生はロリコンだったし、親戚の叔父さんは私の貯金全部持っていっちゃうし、今勤めてる店のあのデブハゲヒゲオヤジは暴力振るってくるしで大変だったんだよね。
だからブラックモアも巻き込まれたくなかったら私なんかと一緒にいない方が良いよ。」

自分で人生を振り返ってみたら段々惨めになってきた。
なんで私ばっかり、とは言いたくはないが、それにしてもいやはや酷い。
男運というよりも単純に運がないだけだと思い知った。
知らずの内に眉が寄る癖は一生治らないだろう。
ため息を我慢して今一度ブラックモアを見てみるとなにやら真剣な表情で私を見ていた。
驚いて一瞬肩が上がった私に向かって静かにブラックモアが口を開く。

「私は暴力なんて振る趣味はありませんし、被害妄想も恐らくないです。
お金もあまり使わないので充分にあります。
寧ろ貴女の為に使いたいし、貴女の傷も癒したいと思っています。
巻き込まれるのが嫌だからとか、貴女との関係が面倒くさいとかの理由で離れたくはありません。
私を頼ってください。
もっと私に迷惑をかけてください。
私はこんなにも貴女が好きなんですから。」

予想外のセリフに熱いものが身体の底から湧き上がってくる。
鼻がつんとして、目に熱が篭ってきた。
しかし口元は緩んで口角が上がる。
私から距離を取らせるつもりが、逆に離れ難くなってしまった。
あんなセリフはズルいだろう。
ブラックモアの声が頭の中を駆け巡る。
口を右手で隠しながら自然的に左手を持ち上げた。

「ブラックモア、手を繋ごう。」

肯定の返事と共に柔らかく優しく握ってくれる私より大きな手に応えるように握り返す。
ずっと一緒にいるのも悪くないかもしれない。
そんな想いが芽生えてしまった。





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