ワムウ
2015/05/16 01:56


「私の酒が飲めんのかあぁぁ!!」

「酒自体ないだろう。」

「五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!
エアーで飲みなさいよ!!」

また酒を飲んで帰って来た女は、この間の時とは違う酔い方をしているようで中々面倒くさい。
酒の入り方や量が違うのだろうか。
よく分からない。
よく分からないが、ただ面倒くさい。

「ノリの分からない超人め・・・。」

「ノリの掴み方が曖昧な人間に言われたくはない。」

じとっ、とした目で睨まれる。
見返せば口を曲げて不満気に文句を口にし始めた。
普段ならばこんなに良く口を開閉しない。
酒の力とは恐ろしいものだ、と改めて思い知る。
おとなしい人格が急に暴れ回るように人を振り回したり、嫌味を吐き出す者は泣き出したりするのだと言う。
人間とは意味が分からない。
ため息を吐いてしまえば更に突っかかって来る女を一体どうしようか。
正直に言えば面倒くさい為、無理矢理眠らせる他ないかと思い付く。
手刀か鳩尾かを悩んでいると女が手を腰に当ててなにやら立ち上がった。
次はなにをするつもりなのか見当が付かない。
再度ため息を吐く。

「もう分かった!!
私の酒を飲まぬと言うならば強行手段に出るのみ!!」

だから酒などないだろう、と言葉にするよりも先に俺の頭を掴む手が早かった。
随分昔に格闘技を習っていた話を聞く限りによると、やはりそこら辺りにいる女よりも強い力だ。
そこには感心する他ない。
一度手合わせ願いたいものだ。
そんなことを考えていた俺に、女はお構いなしに顔を近付けて来る。
なにがしたいのだろうと疑問を浮かべた瞬間に問題が起きた。
今までに感じたことのない感触を味わう。
柔らかいものが口を伝い、皮膚を通り、脳へ渡る。
目の前には近過ぎる女の顔。
経験したこのない体験が、今まさに鼻腔をつく酒の独特な匂いと共に起きている。
この状況はまさか・・・。
理解が追い付かない。

「どうだ参ったか!
これで私の威厳も分かっただろう・・・・・・って、あれ?
ワムウ?どうしたの?
まさかファーストキスだった?
え!ごめんね!大丈夫!?
私今凄い眠いからさ!本当にごめんね!」

なにやら女がまたほざいているが、一言も耳に入らない。
寧ろ俺はこのあとのことをなにひとつ思い出せなかった。
気が付けば朝日が昇る時間にまで動けずにいた自分がいるだけだった。





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