「そろそろ卒業だね」

そう言って窓の外を眺める名字さん。
窓からの夕日に当たる名字さんの顔は、普段より少し大人びて見える。
俺はそんな彼女から目を離せなくなっていた。

『そうだね』
「全然興味なさそう」
『そんなことないけど…』
「けど?」
『…何でもない』
「教えてくれてもいいじゃん」

さっきとは違い子どもみたいに頬を膨らませた顔は、愛らしさを感じる。

「寂しくなるね」
『え?』
「え?」

それってどういう…。

「悠太に会えなくなっちゃうし」

そう言って悲しそうな目でまた外を見る。
そんな顔しないでよ。
俺だって…。
いろいろ考えているうちに、身体が勝手に動いた。
俺は椅子から立ち上がり、名字さんの方へ向かう。
その音に気づいた彼女が振り返ると同時に、彼女を抱きしめた。
名字さんは驚いて声にならない声を発していたけど、すぐに落ち着きを取り戻した。

「悠太?」
『んー』
「離して?」
『嫌だ』

どうしてこんな事を言ったのか、自分でもわからない。
でも今離してしまうと、一生離れ離れになる気がしたんだ。

「悠太ずるいよ」

名字さんは涙を浮かべて俺を見る。

「好きでもない女の子に、こんなことしちゃダメだ…」
『好き』

彼女が最後まで言い切る前に言った。
言ったというよりは、自然と口からこぼれた。

「今…」
『うん、名字さんが好き』

彼女の目から涙が溢れる。
その涙を拭ってあげながら、返事は?、と聞いた。

「わたしも…わたしも悠太が大好き」
『俺は別に大好きとまでは言ってないけど』
「うっ…」
『冗談。大好きだから』


卒業
「ずっと思ってたんだけどさー」
『何?』
「悠太って、わたしのこと名前で呼ばないよね」
『それは…』
「うん?」
『恥ずかしかったから』
「ははは、何それー」
『いいじゃん、別に』
「あ、照れてる」
『うるさい、ばか名前』
「――っ」

片想い卒業。
名字呼び卒業。
クラスメイト卒業。
きっといつか、恋人も卒業。



ぎゃん様リクエストありがとうございます。
悠太初書きなので、口調とか似てねーってなるかもしれませんが許してください。
そういう時は脳内変換しt(ry
小説自体久しぶりに書いたんで酷い出来でしたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。
また、時間を見つけては更新していきたいと思います!

2012.6.17



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