矛兄って誰なんやろう…。
柔兄の上の兄ちゃんってことしか知らん。
…とゆうかわからん。

「廉造」

誰かに呼ばれて振り返る。
そこに居ったんは、俺の知らん人。

『あんた誰や?』

見たこともない人に問いかける。
ちょっと柔兄に似とる気がせんでもない。

「今、お前が考えとった人や」
『は?今?』

今考えとったんは矛兄のことやけど…。

『矛兄?』
「おぉ、そうや」
『…そんな訳あるか!!だって、矛兄は…』

矛兄はもう死んでんねんから。

「廉造も、こない大きなって」

そう言って俺に触れた手は冷たかった。
ほんまに矛兄なん?

「俺もあん時、廉造助けんかったら…」

え、今なんて…。

「お前を抱いとったから、お前が居ったから…。今でもよぉ覚えとんねん。死んだ時のこと」

止めろ…。

「ものごっつ熱くてな。自分の肉が焼けとんのがわかんのや」

止めろや…。

「もしお前が居らんかったら、俺も逃げれとったかもしれんのに…。」

止めてくれ…。聞きない…。

「柔造も可哀想やわ。俺が死んだせぇで、いきなし一番上なってもうて。背負わんでえぇことまで、背負い込んで」

あの柔兄が…?

「俺の真似ばっかし過ぎやねん。それもこれもお前が…」

矛兄は俺の首に手を伸ばす。
冷たい手が首に触れる。

『……ぐっ…』

避けようにも避けれんくて、ギリギリと首を絞められる。
だんだん息が苦しなってくる。

「お前が死んだらよかったんや。お前が死んだら…」

俺が死ねばよかったんやな…―――――プツン


「…ん造っ!廉造!!」
『……ん?…』

目を覚ますと、名前が目を腫らした状態で俺を呼んでいた。

「廉造ーーっ。よかった…、気ぃついて…。ほんまよかった…」

名前は泣きながら抱きついてくる。

『俺…』
「びっくりしたんやからな。ここ来たら悪魔が居って…廉造に…」

震えを抑えながら話してくれる。
なんや、あれ悪魔の仕業やったんか…。
さっきのことが鮮明に蘇る。

『あぁ…うわ…、止めろ…』

俺が生きとんのが悪いんや。
許してくれ。

「…廉造?」

心配して声をかけてくれとるみたいやけど、名前の声は俺には届かへん。

『柔兄もごめん…。俺のせぇで…。俺が死んだらよかったんや』

俺の目から涙が溢れる。
「お前が死んだらよかったんや」って言うた矛兄の声が、頭の中をぐるぐる回ってかき乱す。
俺は我を失い、俺が死んだらよかった、それしか考えられんくなっとった。

『俺が死んだら…っ』

何度も繰り返し同じことを言う俺を名前はきつく抱きしめてくれた。
そのおかげで、少し落ち着きを取り戻す。

「あたしは、廉造が生きとってくれて嬉しいで。やから…そんなこと言わんでよ」
『すまん…、おーきに…』

そのまま名前に身を任せ、涙が枯れるまで静かに泣いた。


悪夢
矛兄がほんまはどう思っとるかわからんけど、俺矛兄の分も生きるから。

「廉造ー。早よしてー」

俺のことで泣いてくれた、こいつの為にも…。



矛兄は廉造が生まれる前に死んでるらしいですね。
やから、よぉ読んだら始めの方で悪魔の仕業ってわかるかもですw
廉造にはずっと笑ってて欲しい願望がありますが、たまには弱ってる廉造もありかと思いまして、書かせていただきました。
ありじゃね?って思ってもらえたら嬉しいです♪

2011.11.27



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