永遠の世界


僕は新しい世界を探して旅に出た
誰も傷つかない
そんな世界
頭の中では、そんなものがないことくらい、僕でも知ってる
それでも僕は旅に出た
旅に出るしかなかったんだ

僕は独りでとぼとぼ歩く
僕の涙のせいだろうか
それとも僕が傷つけた誰かの涙のせいだろうか
足元の土はぐちゃぐちゃで、今まで僕がしてきたことを表しているみたいだった

前の世界で誰かが僕に叫ぶ
帰ってきてよと
置いていかないでよと
僕は振り返らず心の中で呟く

―――ごめん


また誰かが前の世界から出て来ようと必死にもがく
僕について来ようと必死に
でも、外の世界への透明な壁は厚くて、君に通ることはできない
その壁の厚さは僕と君との距離なのかもしれない


何もしてあげられないと落ち込む人まで出てきたみたいだ
だけど、それは違う
僕は楽しい思い出を貰った
笑顔を貰った
それだけで十分だ
だから、もう泣くのは止めて


前の世界は僕がいなくなった瞬間、温かい光に包まれて幸せな雰囲気が漂った
僕が居る限り、どの世界も幸せにはならない
これが、旅に出た本当の理由
僕が独りになれる世界を見つける為


皆、口には出さないけれど、心の中では早く出ていけと思っている
伝わってくる
僕が邪魔なのだと
僕が居るから幸せになれないのだと
それはナイフとなって僕を傷つける
そこに居るだけでだんだん傷が増えていく
僕は逃げるようにして、その世界から飛び出した


僕はやっと見つけたんだ
小さな真っ暗な世界を
そこに入って中から鍵をかけた
誰か間違えて入ってこないように
小さな世界はただ何もない部屋だった
それでもよかった
僕がどこかの世界に行って、幸せを奪うよりは


初めは暗闇が怖かった
今は慣れてきて、周りがうっすらと見えるようになった
ここには何もないけれど、今まで居た世界での思い出はちゃんと胸の中に眠っている
思い出すだけで温かい気持ちになれる僕の大切なもの


僕は一生ここから出ないと誓った
だから、君にはもう会えない
もし、もう一度君に会えるのならば伝えたいことがある

―――ありがとう



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2012.3.4



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