俺がまだ入院してた頃。 隣のベッドに同い年くらいの女の子がいた。 彼女も俺と同じ病気だった。 お互い病気については触れなかったけど、わかってたんだと思う。 だからか、仲良くなるまでにはそう時間はかからなかった。 ある日、薫が俺の為にゲームを持って来てくれた。 よく流行ってるあれだ。 それを名前と2人でやり込んだ。 名前と一緒に居るのが楽しくて、このまま病院に居てもいいんじゃねーかとも思ったりした。 それでもお別れの日はやってくる。 俺が退院する日。 病院の先生たちは笑顔で送り出してくれた。 その中に混じって名前は泣いてた。 そんな彼女を見るに見かねて、俺は名前にゲームを差し出していた。 『お前が退院するまで貸しといてやる。だから、早く退院しろよ。それまで俺がゲームできねぇんだからな』 小さいながらも恥ずかしい感情があって、照れ隠しで素っ気なく言ってしまう。 名前は何も言わずに受け取り、そのまま俺は病院を去った。 お見舞いに行くことも考えたけど、どうしても恥ずかしくて行けなかった。 俺が意を決して病院に行った時、すでに彼女はもう居なかった。 先生に聞いたり、看護士の人に聞いたりしたけど、みんな揃って、遠くに行った、としか答えてくれない。 俺もバカじゃねー。 それがどういう意味なのかすぐにわかった。 俯いて泣きそうになるのをこらえていると、ひとりの看護婦さんが俺にゲームを差し出す。 「翔くんが来たら渡してって名前ちゃんに頼まれてたの」 そのゲームを受け取り、逃げるようにして家に帰った。 家に着くなり、部屋に行ってゲームの電源をつける。 セーブデータには俺と名前のものが並んである。 一緒にやってた時から、全然進んでいなかった。 1番上にある俺のセーブデータをロードしようとしたのに、間違えて上にスクロールしてしまった。 そこには空の保存できる場所。 確かこれって、12こくらいセーブできたんじゃ…。 何かあるような気がして、上から順に下へスクロールする。 セーブデータの名前部分にそれはあった。 しょう いままで ありがとう しょうが だいすき でした ばいばい 名前からの最期の言葉。 溢れる涙を止めることができず、俺は涙が枯れるまで泣きじゃくった。 セーブデータ 今日は名前の命日。 そして、俺の新曲発表日。 俺には珍しくバラード調の曲だ。 …名前、俺、手術成功してアイドルになったんだぜ。 ちょっとはかっこよくなっただろ? この歌、お前の為に書いたんだ。 ちゃんとお前のとこまで届くように歌うから、聞いとけよな。 俺はステージに踏み出した。 翔ちゃん不足で書いたのがこれってw 死ネタはやっぱり苦手です← 絶対泣いちゃいますorz 名前ちゃんは、きっと翔ちゃんの初恋の人やったんやないですかね。 今でも大切に想ってる翔ちゃんは素敵です。 悲しいお話やのに、最後まで読んでいただきありがとうございました。 2012.3.8 |