彼女の気配がする。
また、いつものことだろう。

「わっ!!」

後ろから抱きつかれる。

『何ですか?』

平然を装いながら声をかける。
何もないことくらい、知っていますが。

「もー。ちょっとくらいびっくりしてよ」
『そんな子供だまし、私には効きません』

不服そうな顔をする彼女。
その姿も愛おしい。

「名前ー。置いてくよー」
「トモちゃん待ってー」

彼女は友達に呼ばれ走って行く。
途中で振り返り、大きく手を振ってくる。
本当に恥ずかしい人だ。
彼女に向かって少し手を上げ、私は教室に戻った。


彼女と出会ったのは、入学して間もなくのことで、音也が昼食の時に連れて来たのがきっかけだった。
仲良くなるのに時間はかからなかった。
周りの女子とは違い、私をHAYATOの弟としてではなく、トキヤというひとりの人間として接してくれる。

「HAYATOの弟?知ってたよ?でも、それがどうかした?トキヤはトキヤでしょ。顔は似てるかもだけど、性格全然違うし」

この言葉は衝撃的で、この時から彼女に惹かれいったのは言うまでもない。


昔のことを思い出していると、いつの間にか授業が終わっていた。
私としたことが…情けない。

「トキヤっ!!」

慌てた様子の音也。

「名前が…」

音也の言葉を最後まで聞かずに教室を出る。

「名前、保健室に居るからー!!」

後ろから叫ぶ音也がニヤニヤしていたとも知らず、彼女の元へ急いだ。


『名前っ!』

勢いよく保健室の扉を開ける。
彼女は驚いた様子で目をぱちぱちさせた。

「…慌てた顔、初めて見た」
『そんなことより、怪我を…』
「へ?あー、ちょっと紙で指を切っちゃっただけ」

私に向けて「ほら」と傷口を見せてくる。

『よかった…』
「てか、何で知ってるの?」
『音也が来たんですよ』
「音也…Good job♪」

目の前でいきなりガッツポーズをされる。

『は?』
「だって、トキヤの慌てた顔見れたし。貴重貴重♪」
『あなたって言う人は…』
「それに、初めて名前呼ばれたし」

そう言って、彼女ははにかんで私にピースをする。

「あ、そうだ。絆創膏貼ってくれない?利き手に貼るのって苦手なんだよね」
『…仕方ないですね』

彼女の手を取り、指先に絆創膏を貼る。
そしてその上から優しく触れるだけのキスをした。

「―っ///あ、ありがとっ///」

顔を真っ赤にし、そう言い残して出て行った。
彼女が出て行った後、うるさいほど早く動く心臓を落ち着かせることに集中する。


上っ面の態度
『私も…余裕なんて、ありませんよ…』



いつも冷静なトキヤが悶々してますね。
さすがムッツr(違います byトキヤ
ということで、トキヤ初夢でした。
いつか取り乱したトキヤを書いてみたいw

2011.11.09



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