俺たちは決して続くことのない関係。 だって、俺は存在しない者だから。 いつかは那月に身体を返さなければならない。 もう那月は回復してる。 それくらい俺だって気づいている。 だが、俺のわがままで見てみぬ振りを続け、今まで目を伏せてきた。 名前を那月にも渡したくないんだよ…。 「砂月!名前がっ…」 俺は急いで名前の居る医務室に向かった。 ドアを開けるとカーテンの向こうから、名前の元気そうな声が聞こえる。 なんだよ、脅かしやがって。 そんなことを思いながら、カーテンを開く。 『元気そうじゃねーか』 「………」 名前は俺を見たまま何も言わない。 いつもなら、もっと心配してよー、などと悪態をついてくるのに。 『おい…』 「那月くん…じゃないよね?」 え? 今なんて? 「那月くんのお兄さんですか?」 どうやら聞き間違いではなかったらしい。 俺はなんともいえない気持ちをかみ殺して、名前に話しかける。 『俺は那月の闇の部分だ。那月は今疲れてるから休憩させている。心配しなくていい。那月はすぐ戻ってくる』 「そうなんですか。あの…あなたのお名前は?」 『――っ。知らない方がいい』 その場に居づらくなった俺は、医務室を抜け出した。 「砂月くん、待ってください」 『七海』 「あの…ごめんなさいっ」 『なんでお前が謝んだよ』 「だって、わたしが名前ちゃんに本を取ってって頼んだから」 『事故だろ。お前が謝る必要はない』 「でも…砂月くんのこと忘れて…」 『これでよかったんだよ』 そう告げて歩き出す。 そうだ、これでよかったんだ。 元々俺は居ない存在なんだから。 名前と一緒にいる時間が長すぎた。 那月に早く身体を返さなかった罰だろう。 このまま俺が名前を忘れてしまえばいい。 それがあいつを傷つけずに済む最良の方法だ。 大丈夫、俺は間違っていない。 正しいはず…なのに、どうして涙が止まらないんだ……。 失う記憶 「那月くん、おはよっ」 『ニックネーム、おはようございますー』 砂月ー。 砂月、消えちゃやだよー…← だいぶ悲しい結末ですね。 どうにかハッピーエンドにしてあげたい気もしますw いやー、ものすごく切ない系を書きたくなって、やってしまった作品ですorz ありきたりなストーリー構成ですが、こうゆうのに弱い僕です。 閲覧ありがとうございました。 2012.2.11 |