「「あっ!!」」

そう声をあげたが、時既に遅しというやつで…なっちゃんの作ったスープが僕に降りかかる。
すると、僕の体から変な煙が…。

「おい、那月。お前の料理どーなってんだよ」
「ああー。僕のお人形さんがぁ」
「…って、聞いてねーし」

僕を取り巻く煙が消えると同時に2人が叫ぶ。
どうしたんだろう。
というか、僕はどうなっちゃったんだろう。

「可愛いっ」

なっちゃんはそう言って僕に抱きつく…けど、いつもよりなっちゃんが小さい。

「あなたは、こんなにも可愛い女の子だったんですね」
『えっ…』

今、こ、声…え…声が…?!
今度は僕が叫んだ。


初めは翔ちゃんもなっちゃんも…もちろん僕自身も驚いたけど、今は落ち着きを取り戻した。

「さぁ、行きましょう」

落ち着いたのもつかの間、なっちゃんは僕の手を引いて部屋を出て行く。

「どこ行くんだよ、那月」
「お散歩に行ってきます」
『え…ちょっ…』
「行きますよ」

なっちゃんは翔ちゃんを置いたまま、半ば強引に僕を連れ出した。


『な、なっちゃん…』
「はい?」

にっこりと微笑んでくれる。

『ちょっと疲れちゃった』
「そうですね。少し休憩しましょう」
『ごめんね…』
「謝らないでください。僕が無理矢理連れ出したんですから」
『無理矢理じゃないよ!僕も、なっちゃんとお散歩…したかった…から……』

急に恥ずかしくなって、だんだん声が小さくなる。

「本当にあなたは可愛いですねぇ」

ぎゅっとなっちゃんに抱きしめられる。
いつもされていることなのに、今日はなんだかドキドキして、いつもより嬉しく感じた。


それから僕たちは色々な話をした。
他愛もないことだったけど、凄く楽しかった。
でも…。

『なっちゃん』
「何ですか?」
『目、瞑ってくれる?』
「いいですよぉ。こうですか?」
『うん…。ありがと』

僕はゆっくりなっちゃんに手を伸ばす。
ごめんね、なっちゃん。
ちょっとだけだから…。
そのままそっとなっちゃんの眼鏡を外した。
ゆっくり目を開けるさっちゃん。

「お前、バカだろ」
『だって僕、さっちゃんともお話したかったんだもん』
「変わった奴…」

そう言いつつも、心なしか嬉しそうなさっちゃん。
少しだけお話したあと、「これからも那月のこと頼むぞ」と言ってさっちゃんはなっちゃんの中に戻っていった。


今は、なっちゃんとベッドの中。
なっちゃんの提案で一緒に寝ることになったから。
なっちゃんはというと…既に横で眠っている。
起こさないようにベッドを抜け出し、その辺にあった紙に手紙を書く。
そして、机の上に乗せた。
静かに僕の体を煙が包む。
そろそろお別れみたいだね。

『なっちゃん、さっちゃん…ばいばい』

小さく僕は囁いた。


月光
「那月、先行くからなー」

翔ちゃんの声で目が覚める。
僕の横にはいつものお人形。
1日遊んだりしたのは夢だったのでしょうか。
そんなことを思いながら学園へ行く準備をし始める。
教科書を取りに机へ向かうと、手紙が置いてあった。
それは紛れもなくあの子からの手紙で…。
僕はその手紙を鞄に入れ、翔ちゃんの後を追いかけた。
―――また、いっぱいお話聞かせてね。



人形目線第2弾。
…てゆうてえぇんか微妙ですがw
擬人化さしてしまう程のなっちゃんの料理の威力は最強やと思います←
因みに、第1弾はこれです♪⇒月影
ただ、切ないので苦手な方には、お勧めしません。

2011.11.23



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