レンがいろんな人に人気があるのは知ってる。
目の前でベタベタされても、何も言わずに我慢してきた。
レンが本気じゃないことくらいわかっていたから。
たとえパートナーだとしても、踏み込んではいけないと自分に言い聞かせ、目を伏せてきた。
でもその度、心にひびが入っていく。
いつ壊れてしまってもおかしくないくらい、もうボロボロだった。


そんなある日。

「今日はもうお別れだ、レディ」
「…まだ帰りたくない」
「わがままなレディだ。どうしたら帰ってくれるのかい?」
「じゃあ…キスして」
「仕方ないな、ほんとに」

レンは女の子の腰に手を回し、お互いの唇を求めるかのようにキスをしていた。
レンにとっては、ただ唇を合わせるという行為にすぎないのかもしれない。
ただ、ボロボロだったわたしの心を壊すのには十分すぎた。
その場を立ち去ろうとした時、タイミング悪く携帯がなる。
一瞬レンと目が合った気がしたけど、気にせず走り去った。


ずれだした歯車

キスしている所を見られてしまった。
一番見られたくなかった彼女に。
走り去る彼女を捕まえようと手を伸ばしはしたが、どうしてもその手を掴むことができなかった。
オレは人を信じられない。
どうせ大切に思ったところで裏切られる…そう思うから。
彼女は今までの人とは違う。
それは薄々感じていた。
でも、オレには勇気がなかった。
それを認めるのが怖かった。
だから、気づかないようにしていた。


寮に戻ってもイライラは治まらず、彼女と話をしようと探し続けた。
教室から彼女の音色が聞こえる。
悲しみでつぶれてしまいそうな弱い弱い音。
ドアを勢いよく開け、彼女を後ろから抱きしめる。

「―――っ…。離して…」

冷たい声がオレの心を締め付ける。
無理矢理こちらを向かせてみると、彼女の顔には涙のあとが残っていた。
泣かせてしまったことを知り、罪悪感が増す。

『すまない…』

口から出たのは、これだけだった。

「何が?」

どこまでも冷たくオレをあしらう。
言葉では伝えることができない。
オレは彼女に口づけた。

「…ん…。いやっ…」

思いっきり突き飛ばされる。
そして、彼女の目からは大量の涙がこぼれた。

「あんな子と同じように、キスなんてしないで!!」

決して軽い気持ちで、彼女にキスをした訳ではない。
でも、彼女にはオレの気持ちは届かず、怒鳴られてしまった。

「わたしとレンは、パートナー以外のなにものでもないんだから…」

そう言って、彼女は教室を出ていった。
オレは教室でひとり、涙を流すことしかできなかった。



せ、切ない…。
切なすぎる…。
自分でもこんな切ないものが書けたことに、驚きを隠せませんw
レンルートの途中のシーンを抜粋さしていただきました。2011.11.13



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