『久しゅうござる、父上、母上、兄上。お初にお目に掛かる、奥方殿』

「よく戻った、冬雨。そして、石田殿」

「おお、おお。冬雨………冬雨か?漸く妾の下へ戻ってきたか……。妾は、妾は待ち草臥れたぞ……」

『…………三成、手前が父、伊達輝宗。その右が母、義姫だ』

「………石田三成と申します。よしなに」

『くくっ、滑稽な言葉遣いだね、三成。いつもの威勢と虚勢はどこへいったんだい?』

「黙れ。早々に無礼をして問題を起こしてたまるか」

『そうかい。まあ、聡い君の言動に口出しはしないさ』



私を少し笑い、ゆっくりと伊達政宗の下へと歩みを進める

くつりと笑い、静かに言の葉を紡いだ



『久しぶりですね、兄上。兄上が妻を娶ったというので、顔を見に来ました。いやいや、とても愛らしい奥方殿ですね。兄上と釣り合う、素敵な方だ』

「相も変わらず、口だけは達者だな。いい加減くたばったらどうだ?」

『望みどおり、そろそろくたばりますよ。まあ、くたばったら真っ先に兄上を呪いに向かいますがね』



見慣れた光景、見飽きた全景

この二人の仲の悪さは今に始まったことじゃない

ゆえに、止めようとも思わないし思えない


そんな二人を裂くように女が一人、歩み寄った



「初めまして、冬雨様。伊達藤次郎政宗の正室に上がりました、愛姫と申します」

『冬雨と申す。貴方と遅く会えたこと、私は嬉しく思う』

「……………え?」

『僕は兄上が大嫌いでねぇ。ゆえに、それに関わる人間も嫌いなんだ。つまり、貴方も嫌いというわけだ』



見境無し?いいや違うよ。僕は厳選している。取るに足らないことだけどね。


つらつらと矛盾のした言の葉を並べる冬雨

そして最後に、手向けのように一言



『僕は、君と関わりを持つ気はないよ』



ニコリと笑み、着物を翻す

私の下へ来て、疲れた表情を露にした



『待たせたね、三成。行こうか。僕も、疲れたよ』

「…………ああ」



握った手は、体温を失い、ひどく冷たい

まるで、どこかへ置き忘れたように

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