『神と太陽はきっと僕を嘲笑っているんだ』 天から僕を見て嘲笑っているんだ、甲高い声でけらけらと。 冬雨にしては珍しく後ろ向きな考えだった いつもだったら「神であろうと僕は従う気はない」とか言うのだが 今回に限って自分を負けと認めたような、考え 「貴様にしては珍しく後ろ向きだな」 『そうかな?まあ、そうだね。空を見るたび、ああ、今日も神は笑うのかって。天気のいい日なんかは太陽も笑うよ。くたばれって』 それが辛いから私に語りかけているのか それが悔しいから私に語っているのか それを覆したいから私に語っているのか それを 嘘だと思いたいから私に語っているのか 私には、分からなかった 『死にたくないと思う僕を見て笑う。無駄だと、馬鹿だと。ごもっともだけどね』 それがまた悲しくて悔しくて 手の届かぬ存在で、反論したところで意味など持たなくて だから、涙を流すしか方法がなくて 「そう思って悔しいのなら生きろ」 『そうだね、そうしたいのは山々だけどね。僕にそんな気力も体力も、命もないよ』 だったら足掻くより、ひっそりと死にたいよ。君の傍で。 琴を弾く冬雨の手が止まった 奏でられていた音が、止んだ そして静かに、そっと呟いた 『僕が死んだら、泣いてくれるかい?』 聞かれたその問いに 私は答えることが出来なかった 『僕が死んだら、泣いて、くれるかい、三成』 私は静かに、首を横に振った 「泣かん。貴様の死など、悲しまない」 『それは、寂しいね。妻の死を、少しは悲しんでくれたまえ』 そう言って涙を流す 初めて見た涙があまりにも、悲しくて 見ることが、出来なかった |