「よっ、薄色」

『…………え?』



不意に挨拶をされ、驚いた声を出す

ああ、これは初めて彼と会ったときのことだ



「え、じゃないぞ。朝だからおはようだ」

『おはよう、ございます』

「おはよう」

「家康、貴様誰と話しているのだ?」

「誰って、薄色だ。薄色つづり」

「知らん。誰なんだそれは」



丁寧に私を紹介してくれるも、当然の如く石田君は私を知らない

それは当然の反応だ

おかしいのは、話しかけて、覚えている彼なのだから



「三成ーいくらクラスに興味ないからってそれはないぞ」

「知らぬのだから仕方ないだろう。何組の奴だ」

「同じクラスだ」

「……………駄目だ、思い出せん」



それでいいのですよ

思い出そうとしないで、忘れて

そしてどうか、普通の日々を努力しつつ生きてください



『あの、徳川君、結構ですので』

「何でだ」

『覚えていてくれた。それでいいです。ありがとうございます。ですがどうか。忘れてください』



そしてどうか、誰も嫌わず、生きてください



「……何故、そう言う?」

『私だからです。どうか、教室に帰るまでに忘れてください。私を覚えているのはきっと』



あなただけですから

それなのに私の存在を出しても、きっとあなたがおかしく思われてしまう

私はあくまで人を不幸にする人間ではないのだ

私は、日々を送る人間を視ているだけですから



『あなたは優しい人だ。だから、さよなら』

「薄色…………?」

『卒業までに覚えていたら、本当のことを教えてあげます』



私のことを



明き
(あまりにも眩しすぎて)