頬を撫でる風が鋭く、冷たいのは何故だろうか

そして、それに答えなどあるのだろうか


伊達家に生まれ早十九年

私は今までにこんな辛い思いをしたことがない


全ては自分は天女だと自負する糸堵明音のせいだ

わけの分からない言葉で人々を誘惑し、惑わせる

かくゆう小十郎に幸村も

私がどれだけ説得しても宥めても話しても

結局何一つ信じてなどくれなかった


ああ、世界はなんて理不尽なのだろうか



「名前君、そんなところにいては風邪を引くよ」

『………そう、だな』



行き場を失った、正確には失われた私はたまたま通りすがった竹中に拾われた

同情でもするのかと思えば、豊臣に来いなんて言うし

人間とはまったく分からないものだ



「まだ片倉君や幸村君を想っているのかい?諦めたまえ。彼らは、もう彼女の配下だ。連れ戻そうなんて、それは無駄な足掻きだ」

『行き場を失った私を救ってくれたこと、感謝する。でもね、私はあいつらを裏切ったわけじゃない』

「ひどくつまらない戯言だね、名前君。君はあの場で僕に着いてきて、豊臣の一員となった。それは、彼らへの裏切りだ」

『豊臣に下った気はない。私は、ここで頃合を見てるだけだ』



狂気を孕んだ眼差しで私を凝視する竹中

蛇に睨まれた蛙のように、私の身体はかたかたと震える



「まさかとは思うけど、また彼らの下へ戻る気かい?」

『そのまさかさ。私は伊達家の当主だ。ここでへばってちゃ伊達の名折れだ』

「君は、伊達にも、ましてや奥州にさえ戻ることはできないよ」



その言葉の意味が、分からなかったし、分かりたくなかった

戻ることはできない、小十郎にも幸村にも



『………なん、で………』

「何故?面白い質問だね。君は僕の妻だよ?見す見す奥州へと帰すわけにはいかない。君は、僕の側でただ笑っていればいい」

『つ、ま…………?待ってよ、私そんなの…………』

「今更取り返しはつかないよ?秀吉も三成君も、あああと家康君も認めた。家臣も重臣も僕の両親も君の両親も認めた。これでもまだ、足掻くかい?」



その言葉は絶望一色だった

希望の色を知らず、絶望しか知らないその言葉に、私は抗うことなど叶わなかった



「片倉君が彼女側に着いてくれたのが好都合だったね。こうもあっさりと君を手に入れることが出来た。まったく、不出来な従者だね」

『こじゅ、ろ…………小十郎………っ』

「今君の側に、隣にいるのは片倉君じゃない。僕だよ。妻が夫以外の男に興味を持つなんて怪しからんね。いっそ誰にも会わせないように、奥座敷にでも幽閉してしまおうか」

『っ………やっ………いやぁ……!』

「それが嫌なら、城から出ないで過ごすことだね」



くすりと笑い、竹中は唇を重ねた

そして、腕に抱き、信じ難い言葉を発した



「君は、僕のものだ」



その閉じ込められた腕はすぐにでも壊れそうなのに

今の私では、抗うことさえも出来ない



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半兵衛って常にヤンデレっぽいからすんなり書けた
ヤンデレと狂愛の見分けがつきません
以下返信です














返信!
十万筆頭ありがとうございます!
サイト運営は管理が大変ですが、楽しいので平気です。
フリリクに参加していただいて私も嬉しいです。
リクエストありがとうございました!





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