「ねぇ、空櫛」

『はい?』

「ちょっと、いいかしら?」



どうせ伊達君のことでしょう

分かりきっている答えに私は、



『はい』



満面の笑みで、答えた















「いい加減にしてもらえる?」



口頭一番、それですか

呆れてものさえ言えない



「政宗に色気使って。なにがしたいのよ」



使っていない

この人に目は付いているのだろうか

五感全てが失われているとしか、思えない




「捨てられた女のくせに」

『それで私の傷を抉っているつもりですか?』




捨てられた?結構ではないか

むしろ捨てたことに私は感謝すべきなのだ

下卑て卑しくて訳の分からないことしか考えない男

私は、いらなくて仕方なかったのだから




「あんたの傷なんてどうでもいいわよ。問題は、」

『私が伊達君に近付くこと。ですか?』

「そうよ。私の恋人に色目使って」




色気の次は色目ですか

七つの大罪の傲慢、嫉妬、色欲の三つを貴方に手向けたいですね



『貴方の勘違いではありません?』

「馬鹿にしてるの?私は、あんたの悪行なんて……」

『悪行、ですか。では貴方がこうして私を一方的に攻め立てるのは悪行ではないのですか?』

「ッ――――――」



論理性は欠けているようだ

少し反論すれば、押し黙る

まったく、知能の低い人間ですね



『この後に予定があるんですの。失礼します』

「今度政宗に何かしてみなさいよ。あんたなんて、」

『消せるのですか?貴方に、私が』

「消すわよ。全人類を敵に回しても、消してやる」

『それは、彼も敵に回しますがね』

「あんたに汚されるくらいなら、マシよ」



私は雑菌ですか、汚物ですか

仮に私がそうだとした貴方は馬鹿ですね



馬鹿-fool-