喜界島視点


「喜界島殿」

「………真田君?」

「少し、よろしいか?」



私を訪ねてきたのは、十一組(クラスメート)の真田君だった

彼は女子が苦手なためか、同じクラスでも話したことは、片手で数える程度

その彼が私に話しかけてくるとは、今日は不吉なことでも起こるだろう



「う、うん」

「その、凪政殿のことなのだが………」

「伊達、さんの?」

「先日片倉殿が凪政殿に傷を負わされ……。現在(いま)は病院で入院中でござる」




片倉殿、というのは二年十三組の片倉小十郎先輩だ

直接の接点も接線もないけど、名前だけなら聞いたことある




「へぇ。それが、どうかした?」

「凪政殿に伝えておいてはくれぬか?アカネ殿が、“私は伊達さんを許さない”と言っていたこと」

「なにそれ。やだよ、私。伊達さんのこと好きだもん」

「別に喜界島殿の本心ではなかろう?」




馬鹿だ。大馬鹿だ。すっごく馬鹿だ

伊達さんは悪くないのに、悪いのは小長井さんなのに

どうして男の子は伊達さんを敵に回すの?

伊達さんはとってもいい子なのに




「……真田君、馬鹿だね」

「某、学は無いでござる」

「違うよ。真田君は馬鹿だよ!そーやって伊達さんを敵に回して!伊達さんは悪くない!あの子はいい子だ!」

「この学校に良いも悪いも関係ないでござる!」

「伊達さんはあんた達が好きだった!世界中の誰よりもこの学校が好きだった!でもその思いを靴で普通にぐしゃぐしゃにして!」




あの子は、伊達さんは悪くない


だから伊達さん


私はいつだってどんなときだって


伊達さんの味方だよ




「伊達さん(マイナス)だからって!凪政(マイナス)だって!彼女は彼女だ!」




私は伊達さんを傷付ける奴を

許さない




「伊達さんを殺したいなら!世界中の人を味方につけて!私を殺せばいい!」




いつだって誰かに笑いかけてくれる彼女が大好きだ



(馬鹿だよ、皆皆)
(あの子は普通なのに)