伊達凪政は、過負荷(わたし)から見ても才能が既に開花していた

なんの才能、かなんて誰にも分からないが、彼女は天才だ


人を傷付けることしか分からなかった私に日常を与えてくれたのは彼女
友を信じず、作らず、壊した私に友の有難さを教えてくれたのは彼女


彼女は私にとって友を超えた「なにか」だった


それは今でも何一つ変わりはしない



「よっ、サヤカ。機嫌良さそうじゃねぇか」

「元親………。その名で呼ぶなと何度言った」

「んな顔すんなよ。美人が台無しだぜ?」

「ふんっ。崩れるも台無しも、どうでもいい」




長曾我部元親は、旧友、というより腐れ縁

一時でもこいつを私は友なんて幼馴染なんて思ったことはない




「なんのようだ」

「サヤカ、お前から見て、アカネがどう見える」




アカネ、といえば先日転校してきた小長井のことだろう


どう見える、か


邪魔にしか、見えない




「どうも見えん。答えられない。それが私の答えだ」

「なら、伊達はどう見る?」




凪政は、姫の次に出来た大切な人だ


雑賀孫市(わたし)を友人と見て、過負荷(わたし)をいい人と見る変わり者


それでも、嬉しかったし、ありがたかった




「凪政のことを私が嫌うと思ったか」

「思うね。お前は雑賀の三代目だ。人を嫌うのも裏切るのも得意だろ」

「随分と私はお前の仲では最低な女だな」




パラパラと、廊下の塗装が剥がれ始める




「…あ?ここ、古いのか」

「元親、一つ言っておこう」




右手に一番近い壁を軽く叩く


すると、グシャッ、と盛大に壁は崩壊した




「私は、友人が大切だ。お前は、お前らは、大嫌いだがな」




雑賀孫市 二年マイナス十三組所属 AB型

マイナス 「憤怒した烏(フォールレイヴン)」

己の怒りを他人に物に移動させる



いつしか、そんな能力(マイナス)をもっていた


悲しくなかった、むしろ、嬉しかった


彼女と、凪政と同じ最低(マイナス)な人間になれたのだから



(生きる理由をくれて)
(ありがとう)



――――――――――――――
孫市姉さまはレズじゃないよ
友達としての女好き
一番最初の友達は鶴姫