「『やあ、』『飛沫ちゃん』」

「!球磨川さんじゃあないか。何だよ」

「『いやあ』『ちょっと飛沫ちゃんに聞きたいことがあってね』」



放課後

それはあたしが楽しみとする時間の一つだ

放課後は凪政と遊べるし、凪政と一緒にいられる


そんな貴重な時間をぶち壊した球磨川さんが憎くて仕方がない




「聞きたいこと?」

「『うん』『飛沫ちゃん』『君はなんで凪政ちゃんに着いてるの?』」




皆目意味が分からない


なんで凪政に着いてるか?はっ?


んなもん、あたしが凪政が好きだからに決まってんだろ




「嫌だねえ、球磨川さん。あたしが凪政に着くのが不服で不満かい?」

「『うん、とっても』『だってあの子はアカネちゃんを傷付けた』『僕でも消せない癒えない傷を』」




小長井が傷付いた?

傷付いたのは凪政だけだ

あいつは、何も傷付いてない、笑ってるじゃあないか




「球磨川さん」

「『ん?何だい?』」




あたしの過負荷(マイナス)は「致死武器(スカーデット)」

相手の古傷を開く殺せも封じもできないモノ


過去に黒神にボコられた球磨川さんに傷は大量だ


死んだって生き返るだろうけど、けど




「致死武器(スカーデッド)!」



身体中から大量の血を流して倒れる球磨川さん

何で、どうして

そんな顔を浮かべている



「『……飛沫ちゃん』『どうしてだい?』」

「どうして?はっ。決まってるだろ。あたしの大親友の凪政を罵ったからだよ」



まだ開いていない傷はあるだろう

死ぬまで開かせて、球磨川さんの好きな安心院さんとこにでも送ってやる



「じゃー球磨川さん」

「『何だい?』」

「あんたは一体あいつに着いて何がしたかったんだ?」

「『……彼女は僕の思い人だ』『彼女を傷つけるやつは許さない』」




思い人、想い人

球磨川さんが好きなのは安心院さんで人吉先生で

球磨川さんの思い人は小長井アカネで




「そうかよ、球磨川さん。………致死武器(スカーデッド)」



表現のしようもなく血を垂れ流しにする球磨川さん


きっと心配で探しに来た小長井でも見つけて叫ぶだろう




『……?Hum……飛沫が殺ったのか?』

「凪政!これは………」

『責めないさ、咎めないさ。だって飛沫は、私のためにしてくれたんだろう?』




廊下で運悪く出くわした凪政

怒らない、何で、怒らないんだ




『怒ってほしいの?』

「ちげーけどよ」

『ははっ。ならいいじゃないか。球磨川の馬鹿に時間潰されたけど、まだある。私は甘いモン食いたいんだけどよ、行くか?』

「ああ!」




そう言って笑いかけてくれる


過負荷(マイナス)のあたしに、弱者(マイナス)のあたしに




『あ?なんだよ、飛沫。私の顔になんか付いてるか?』

「付いてねーよ」




この笑顔を、失わせてはならないと


そう思えたのは何故だろうか



(ゴミの分際で)
(あたしの幸せを奪うな)